★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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ニック・オブ・タイム

 ジョン・バダム監督、ジョニー・デップ主演によるサスペンス・アクションの小品。小気味良い展開と、ほぼ現実の時間通りに進行する駆け引きが巧妙で楽しめました。

 全体に地味なのが好みです。要所要所での都合のいい展開とか、最後の終わり方はイマイチ納得がいかないものの、良くできた娯楽作だと思いました。何より主人公がどんどん追いつめられていく様が克明に描かれるので、感情移入できればかなりの緊張感が楽しめます。
 眼鏡をかけたジョニー・デップがやけに「お父さん」らしくて妙。クリストファー・ウォーケンも、いつもの迫力に欠けるような。でも他の映画では見せない表情なので、ファンなら要チェックです。気楽に見ることが出来れば、充分面白い映画なのでは。

監督:ジョン・バダム
出演:ジョニー・デップ、クリストファー・ウォーケン
20051011 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ユージュアル・サスペクツ

 ブライアン・シンガー監督、クリストファー・マッカリー脚本による、抜群の構成力が魅力のサスペンス・ミステリ。どうせつまらないだろうとタカをくくっていたら、まんまとやられました。

 非常にしっかりした構成の映画なので、きちんとシナリオを追っていかないと面白さは半減するかも知れません。ただ穿った見方をすればトリックはすぐに分かってしまうので、推理力は控えめで観ると良いのでは。騙される楽しさでは、これほどの映画は少ないのでは、と思いました。
 逆に言えば騙すことに全てをかけている映画なので、話にテーマらしいものはありません。そのせいか鬼気迫るものが無く、最後まで予想の範囲内の盛り上がりに終始します。映像も平凡ですし、サービス旺盛な演出は大仰と感じるところも多々ありました。賛否分かれるのは、多分こういう点が原因なのではないかなあ、と。僕もこの辺が気になって好きになれないのです。

 純粋にミステリ的なカタルシスが好きな人は、一度観てみては。でも、映画を何百本と観ている人には向かないかも知れません。

監督:ブライアン・シンガー
出演:ガブリエル・バーン、スティーヴン・ボールドウィン、チャズ・パルミンテリ、ケヴィン・ポラック、ケヴィン・スペイシー、ベニチオ・デル・トロ
20051010 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

シャドウ・オブ・ヴァンパイア

 F・W・ムルナウによる名作ホラー「吸血鬼ノスフェラトゥ」を豪快にパロディ化したナンセンス映画。あの映画の吸血鬼役の俳優が、実は本当に吸血鬼だったら……というアイデアと配役が良いので期待したんですが、期待したほどには楽しめませんでした。

 シリアスになりたいのか、コメディにしたいのかハッキリしない脚本が最大の不満点です。笑わせすぎで低俗になるのを恐れたのか、シナリオで笑いを取ろうとしている部分が数カ所しかありません。あとはオリジナルとその付近の人物たちに捧げたオマージュ(というか皮肉?)ばかりで、オリジナルに思い入れのない身としては引いてしまいました。
 ただ、ウィレム・デフォーの吸血鬼っぷりが良いので、それだけで笑えるのが救い。画面に出てくるだけで笑えるというのは、なかなか凄い業です。これで映画が面白かったら、と残念しきりの一本。

監督:E・エリアス・マーヒッジ
出演:ウィレム・デフォー、ジョン・マルコヴィッチ、ウド・キアー、キャサリン・マコーマック
公式サイト
20051009 | レビュー(評価別) > ★ | - | -

アダプテーション

 「マルコヴィッチの穴」のスパイク・ジョーンズ&チャーリー・カウフマンのコンビによる、これまた風変わりな作品。原作小説の映画脚本化を頼まれるも「バートン・フィンク」ばりに悩んでしまうチャーリー・カウフマン自身の姿を、双子の弟を引き立て役として皮肉たっぷりに描いています。

 シニカルなテーマには唸らされました。延々とハリウッド批判をするものの、映画の展開自体はコテコテのハリウッド風、という試みも面白いと思います。ハリウッドの「嘘」を象徴するかのように嘘で固められた登場人物たち(カウフマンはデブでもハゲでもないし、本当は弟もいない、とか)も象徴的。ただ、それが面白いかというと微妙です。テンポも速く、内容を消化しきらないうちにどんどん話が進んでしまって、笑うに笑えないというのが正直なところ。こうなると、畳み掛けるような演出は内容が無いのをごまかしているだけなのでは? と疑ってしまいます。
 アカデミー助演男優賞を受賞したクリス・クーパーは、とても演技とは思えないほどのハマリ役。でもやっぱりニコラス・ケイジが…あの顔が2人出てきて会話をするというのは反則です。しかも太ってるし、画面に出てくるだけで笑ってしまいました。

 これを観ると「マルコヴィッチの穴」のテーマがより鮮明になる、言うなれば「”裏”マルコヴィッチの穴」といった作品。ただ、単体の映画としてはつまらない内容になってしまったのが残念でした。

監督:スパイク・ジョーンズ
脚本:チャーリー・カウフマン、ドナルド・カウフマン
出演:ニコラス・ケイジ、メリル・ストリープ、クリス・クーパー、ティルダ・スウィントン、ブライアン・コックス
公式サイト
20051006 | レビュー(評価別) > ★ | - | -

赤ちゃん泥棒

 コーエン兄弟がデビューしたてのころに撮ったドタバタ・コメディーの秀作。とにかく冒頭からのテンポの良い展開と、あまりに特殊な展開に圧倒されるばかりの作品でした。
 今観ても新鮮なスティディカムによる移動撮影や、そこまでやるかと言いたくなるほどひねくれたキャラクター、無駄なシーンをカットしまくる編集も注目すべきところではありますが、何よりそれらを不自然と思わせない、映像に対する天性ともいえるセンスがすごい。また、ただのコメディーに終わらない脚本と、多少ファンタジックな語り口もコーエン兄弟の素晴らしいところなのでしょう。そんな中で、さりげなく演技派のホリー・ハンターとニコラス・ケイジが主役二人を好演しているのがまた良かった。

 ニコラス・ケイジの出演作から一本選ぶとしたら、迷わずこの作品を選びます。そういう人も多いのでは。映画は多少ブラックなぐらいが好き、という人も是非。

監督:ジョエル・コーエン
脚本:イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン
出演:ニコラス・ケイジ、ホリー・ハンター、ジョン・グッドマン
20051006 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

激流

 カーティス・ハンソン監督によるアクション映画の秀作。これはケヴィン・ベーコンのための映画。とにかく彼の名演の光る一編に仕上がっていて、メリル・ストリープですらいつもの存在感が霞んでいます。

 もちろん基本はアクション映画で、激流をボートで下る映像の迫力や、クリフ・ハンガーばりのアクションシーンも見事なんですが、その間を巧みにつなげた登場人物たちのドラマもなかなかのものでした。誰が主役になってもおかしくないほど俳優の演技も見事。地味な人が揃っているとも言えるんですが、それが妙にリアルで、かえって引き込まれてしまいました。悪い点を挙げるならば、ラストのアクションが一番地味でさすがに不完全燃焼だったのと、邦題のセンスのなさぐらいなのでは。

 パンチ力不足の感は否めませんが、サスペンスが得意な監督がアクション映画を撮ると、ドラマも気にしてくれるので良いですね。こういう地味でも良い作品が増えてほしいところですが、現状のハリウッドでは難しいでしょうか……。

監督:カーティス・ハンソン
出演:メリル・ストリープ、ケヴィン・ベーコン、デヴィッド・ストラザーン
20051006 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

スリー・キングス

 ハリウッドの方程式から逸脱した作りが見事な異色戦争ドラマ。金塊を巡るブラックコメディかと思って観ていると、中盤から戦争映画としての本性を現し始めます。現地人を無視するアメリカ人の薄情さとか、正規軍とゲリラの入り乱れる戦況がさりげなく描かれていて、シュールな中にも説得力がありました。

 湾岸戦争当時の混沌とした状況を半ばデフォルメして描いているのが新鮮。現地人の困惑や窮状を巧みに物語に組み込みながら、それを前面に出さずに物語に徹しているところに好感を持ちました。
 最初はコントラストが強すぎると思った画面も、時間が経つにつれて、それが砂漠を撮影する上で最適だと思えるようになるから不思議。割と渋めながら人気のあるジョージ・クルーニーとマーク・ウォルバーグを主演に据え、脇にアイス・キューブとスパイク・ジョーンズを持って来るという、堅実なのか賭けに出てるのか分からない配役も、画面で見れば上手くはまっていました。

 デヴィッド・O・ラッセル監督は脚本もこなす人物で、この作品も一人で脚本を書いています。中途半端な政治メッセージがうるさい、という方もいると思いますが、僕はその「お粗末な政治の存在」が介入者としてのアメリカの立ち位置を上手く皮肉っている、と感じました。

監督:デヴィッド・O・ラッセル
出演:ジョージ・クルーニー、マーク・ウォルバーグ、アイス・キューブ、スパイク・ジョーンズ
20051005 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

マウス・ハント

 「ザ・リング」「パイレーツ・オブ・カリビアン」など最近はヒット作を量産しているゴア・ヴァービンスキー監督のデビュー作。なかなか器用な作風が売りの人ですが、このころから既に芸達者ぶりを発揮しています。ただ、全体に中途半端な印象でした。

 クリストファー・ウォーケンの「掃除屋」は流石に笑わされましたが、それ以外はどれも微妙。ビジュアルや設定からブラックコメディを期待していたんですが、映画自体はファミリー向けだったので物足りなく感じたのかもしれません。まったりとしたテンポなのも一因です。アクションシーンの演出自体は目が覚めるほど良いのに、ドラマとの接続が強引と感じるところもありました。
 したたかなネズミの行動自体は、観ていてついつい応援したくなるほど。映画自体のアイデアは良いし、決してつまらない映画ではないだけに、もう少しテンポが良ければ、と惜しい感じです。

監督:ゴア・ヴァービンスキー
出演:ネイサン・レイン、リー・エヴァンス、ヴィッキー・ルイス、クリストファー・ウォーケン
20051005 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ロビン・フッド

 ケヴィン・コスナー主演の大ヒットアクション映画。非常にそつのない作りで、絵に描いたようなハリウッド映画に仕上がっていますが、それがこの映画の質には非常にマッチしていました。

 アクションあり、ユーモアあり、憎たらしい敵役あり、ラブロマンスありの、ハリウッド映画のお手本のような作品。大味ながら迫力のあるアクションシーンが満載で最後まで一気に楽しめるだけでなく、ファミリー向け映画としても安心して観ることの出来る良質のエンタテイメントです。
 初めて観たのは中学生の頃でしたが、ケヴィン・コスナーを差し置いて、モーガン・フリーマンとアラン・リックマンの二人に一気に惚れ込んでしまいました。その二人が好きな方も、ぜひ。ラストのファンサービスも粋ですね。

監督:ケヴィン・レイノルズ
出演:ケヴィン・コスナー、モーガン・フリーマン、クリスチャン・スレイター、メアリー・エリザベス・マストラントニオ、マイケル・ウィンコット、アラン・リックマン
20051005 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

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