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アメリ

 ジャン=ピエール・ジュネ監督の長編4作目。今回はマルク・キャロとのコンビを解消し、ひたすら自分の世界を追求しています。もう、こんな映画を待っていました、という気分。初めてジュネ作品を観たときから、いつかはこういった映画を撮ってくれるのではないかと期待していたのですが、これで夢が叶いました。

 一応恋愛映画なのですが、物語に占める恋愛の比重はひたすら低く、むしろアメリの無邪気な悪戯の方が強調されています。この悪戯が、またジュネ作品には恒例のバタフライ効果満載で笑えました。今回は更にギョーム・ローランによる知的な台詞も加わったおかげで、多弁でエスプリの効いたキャラクターが増え、画面は明るくなったのにブラックさは増しています。
 ジュネ監督にとって初めてのロケ撮影ですが、空をデジタルで描き替えたり、ポスターを全てオリジナルのものにしたりと、独特の世界観は損なわれていません(モンマルトルはこんなに美しくはない!)。また、ヤン・ティルセンによる音楽や、最後まで姿を現さないナレーターといった「新しい試み」も、まるで当然のように映画の中で市民権を得ています。何よりオドレイ・トトゥとマチュー・カソヴィッツのカップルが可愛らしくて、思わずにやけてしまいました。

 アメリの妄想を中心に話が進むので、その社会不適合者っぷりに拒絶反応を示す人も多いようですが、僕は気になりませんでした。むしろ、きちんとツッコミを入れながら力強く肯定しているのが嬉しいかったぐらい。そういう人にはそういう人なりの社会との付き方がある、という非常に前向きなメッセージです。ラストの小説家イポリト氏の態度に、そういった監督の姿勢が反映されている、と深読みしてみましたが、どうでしょう。
 でも、そんな事を考えずとも単純に楽しめるのがジュネ映画の良いところ。子供は無邪気に、大人はシニカルに楽しめる映画でした。

監督:ジャン=ピエール・ジュネ
出演:オドレイ・トトゥ、マチュー・カソヴィッツ、ドミニク・ピノン、イザベル・ナンティ、リュファス
20051108 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -
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