★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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セブン

 デヴィッド・フィンチャーが新人らしからぬところを見せつけたサイコ・サスペンス映画の傑作。これは問答無用で惚れました。

 宗教的なテーゼに基づいて犯行が繰り返される様が、非情とも言える客観性と共に描かれています。それを傍観するしかない主人公達の無力感が、土壇場でいきなり観客自身にまで襲いかかってくるときの恐怖は、他のどの映画においても感じたことのないものでした。見終わって映画館から出てくるときにまだ身体が震えていたのを覚えています。
 降り続く雨の向こうに霞んでいる現実感のない町並み、精神を逆なでするノイズ混じりの音と映像、「人を殺したくなる」ほどエキセントリックな犯行、それを楽しんでいる自分に気付いたときの倒錯感、そういう全てを実現したフィンチャー監督の演出と、ダリウス・コンジによる撮影にただ圧倒されるばかりの映画でした。

 あまりの後味の悪さに、最初は「二度と観たくない」と思いましたが、時間が経つにつれてその魅力に身体が蝕まれていく心地よさを感じられた希有な作品です。カイル・クーパーによるタイトルバックが、それを端的に表現していて秀逸。なお、犯人役の俳優は映画の予告ではクレジットされていなかったので、ここでも敢えて書きませんでした。そのあたりは観てのお楽しみということで。

監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン、グウィネス・パルトロウ
20051023 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -
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