パリ・テキサス

一切の言葉を放棄し、行動の意図すらつかめない主人公に不思議と感情移入してしまって、長い上映時間の最後まで身動き一つ出来なかったことを覚えています。ロード・ムービーばかりを撮ってきた監督にとって、このストーリーは些か分かり易すぎるかもしれませんが、その単純なドラマを146分という長い上映時間を使ってじっくり描写することで、人間と世界の本質をなんとか描き出してやろうという監督の執念が伝わってきて、映像から目が離せませんでした。そして全てが終わってから振り返ると、アメリカという大地の美しさが心に響いてきます。この空気感こそ、アメリカに執着する監督ならではの拘りなのでしょう。
映画を観る動機の一つに「価値観を変えられる」というのがあるとするなら、まさにこの映画こそ、そのエネルギーを持った作品だと思います。頭で考えるのではなく、その空気に触れさせることで観客自身の視野を広げるという、まさにロードムービーの醍醐味が結実したかのような傑作でした。

監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ハリー・ディーン・スタントン、ナスターシャ・キンスキー、ディーン・ストックウェル、ハンター・カーソン

20051118 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -