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地獄の黙示録

 ベトナム戦争を題材にしたジョセフ・コンラッドによる原作(クレジット無し)を、『ゴッドファーザー』『アメリカン・グラフィティ』のフランシス・フォード・コッポラ監督が映画化したカルト的作品。ベトナム戦争映画の中では、『フルメタル・ジャケット』と双璧を成す傑作です。

 凄惨なベトナムの戦場を脈絡なんか無視して点々と描き、観念的な終盤へなだれ込む展開は、他の戦争映画とはあまりに違う手法で驚かされます。しかし、同時に映画からは圧倒的な迫力と説得力も感じました。そもそも戦場にはストーリーも脈絡もないのだから、これこそベトナム戦争の臨場感を最も的確に伝える手法だったのかもしれません。戦争を否定も肯定もしていない、ただ美しく恐ろしいこの映画には、人が戦争に対して覚える全ての感情が詰まっているように思いました。
 主演のマーティン・シーンの気迫の演技と、それを凌駕するマーロン・ブランドの存在感はもはや伝説。ヘリ爆撃のシーンにワーグナーをかぶせたりと、音楽の使い方もいちいち凝っています。ナパームのシーンなど、本物の迫力にこだわった特殊効果も見応えがありました。

 この設定が実話を元にしているということが、戦争の恐ろしさを何よりもよく表しているのではないでしょうか。評価について賛否両論はありますが、まさにベトナム映画の集大成と言える作品です。撮影にまつわるドキュメンタリー作品である『ハート・オブ・ダークネス』や、未公開シーンを含めた完全版など、関連作品も一見の価値有り。

監督:フランシス・フォード・コッポラ
出演:マーティン・シーン、マーロン・ブランド、デニス・ホッパー、ロバート・デュヴァル、フレデリック・フォレスト、ハリソン・フォード、ローレンス・フィッシュバーン
20110604 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -
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