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ファイト・クラブ

 デヴィッド・フィンチャー監督によるサスペンス映画の超問題作。テーマ自体は使い古されたものかもしれませんが、その提示方法があまりに暴力的で斬新でした。フィンチャー監督作品の中では、この作品が一番好きです。

 これはアメリカのX世代に対して向けられた映画で、その世代が持つ不満やストレスを直接的な物語にしたところが斬新だったのだと思います。だから感情移入の対象である主人公は名前を名乗らないし、地名すらこの映画からは極力排除されています。その中で「自分にも何か出来る」と勘違いさせるシナリオのパワーはかなりのもので、実際に世界各地でファイトクラブが設立されて問題になったことを見ても、そのメッセージ性の強さが分かります。
 とまあ語りたいこともありますが、単純にサスペンス映画として楽しめたのが高く評価する最大の理由です。二人の主人公が共に魅力的で、特にE・ノートンが優柔不断なダメ青年を巧みに演じているので物語の説得力が増していると感じました。フィンチャー監督作の「遊び」もこの作品では極まっていて、しかもストーリーと直結した演出は他で見られない快感です。

 生きる目標を失っている若い世代に向けた、フィンチャー流のメルヘン、というのがこの映画の本質ではないでしょうか。映画全編が暴力にまみれていますが、この映画をバイオレンス映画だと評する人はそもそも観客として想定されていないので、黙って立ち去るのが無難でしょう。

監督:デヴィッド・フィンチャー
原作:チャック・ポーラニック
出演:エドワード・ノートン、ブラッド・ピット、ヘレナ・ボナム・カーター、ジャレッド・レト、ミート・ローフ・アディ
20051027 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -
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