★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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ブルース・ブラザース 2000

 第1作より18年を経て製作された、カルト音楽コメディの続編。さすがにパワーダウンは否めないものの、前作のファンとしては一応観ておきたい作品です。
 今度はダン・エイクロイド&ジョン・グッドマンのコンビで、再びブラックな笑いを繰り広げています。お話の筋は前作と大して変わらない代わりに、相変わらずツボな音楽とカーアクションは存分に楽しめました。特に、前作以上に豪華なゲストを揃えてのセッションの数々は必見。ただ、何となく物足りない…。撮影技術が上がってしまっただけ、映像がショボいのが目立ってしまったような。まあ、それがジョン・ランディス監督らしいといえばらしいんですが。

 それにしてもジェームズ・ブラウンの若々しさには、この人は年を取らないのかと目を疑いました。音楽と爆発とくだらないギャグ満載の、あの世界をもう一度と思う人は、ぜひ。

監督:ジョン・ランディス
出演:ダン・エイクロイド、ジョン・グッドマン、ジョー・モートン、J・エヴァン・ボニファント、エリカ・バドゥ、ジェームズ・ブラウン、アレサ・フランクリン、B・B・キング
20060424 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ブルース・ブラザース

 今は亡きジョン・ベルーシの代表作にして、未だにカルトな人気を誇るB級コメディの伝説的傑作。映画全編を通して、どこにツッコめばいいのか分からないほどのナンセンスさは必見です。
 アクションもギャグも盛りだくさんの映画なんですが、それに輪をかけて豪華なミュージシャンの出演には驚かされます。ジェームズ・ブラウンのゴスペルで最初からノックダウンされ、あとは開いた口が塞がりませんでした。スタントマンが本気で逃げてるカーチェイスも凄い。100台以上のパトカーを惜しげもなく壊しまくり、あまつさえ軍隊を動員しての追走劇は、どんな派手なCGも敵わない非常識ぶり。もちろん細かいギャグもいちいち笑えるんですが、それ以上に映像の力でねじ伏せる笑いが最高に冴えていました。

 銀行員役で登場するスティーヴン・スピルバーグなんかも要チェックです。さすがに古い映画なので今の映画とは映像の質が違いますが、感心すら覚えるほどの破天荒さは何度観ても楽しめます。ぜひ。

監督:ジョン・ランディス
出演:ジョン・ベルーシ、ダン・エイクロイド、キャリー・フィッシャー、キャブ・キャロウェイ、ジョン・キャンディ、ジェフ・モリス、ヘンリー・ギブソン、ジェームズ・ブラウン、レイ・チャールズ、アレサ・フランクリン、ツイッギー、スティーヴン・スピルバーグ
20060423 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -

アマデウス

 モーツァルトの死を同時代の音楽家サリエリの視点から描いた舞台劇を、豪華に映画化した傑作。俳優も映像も文句なしのコスチュームプレイです。

 トム・ハルスの変則的なモーツァルトに初めは驚かされましたが、そのキャラクターと悲劇との対比が絶妙。”天才”モーツァルトに嫉妬しつつ憧れる”凡人”サリエリの葛藤は、分かり易いだけに観る者の心に強く響きます。当然ながら使われている楽曲もほとんどモーツァルトのもので、映画の評価と相まって、すっかりモーツァルトに傾倒してしまいました。
 トム・ハルスのエキセントリックな演技を正攻法で受け止めたF・マーレイ・エイブラハムは見事。プラハでオールロケしたという映像や、程よく生活感のある衣装なども美しい。ヨーゼフII世など貴族のいい加減さも物語に幅を持たせています。とにかく全てが豪華、かつリアリティを感じさせる納得の出来でした。

 2002年にはディレクターズ・カット版も公開されています。20分の追加映像は正直どこまで必要だったのか疑問ですが、この映画をドルビーの大スクリーンで観ることが出来たのは嬉しかった。定期的に上映して欲しい作品です。

監督:ミロス・フォアマン
原作:ピーター・シェイファー
出演:F・マーレイ・エイブラハム、トム・ハルス、エリザベス・ベリッジ、ロイ・ドートリス、サイモン・キャロウ、ジェフリー・ジョーンズ
20060312 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -

永遠のマリア・カラス

 不世出の天才オペラ歌手マリア・カラスを、かつて彼女の友人であったフランコ・ゼフィレッリ監督が敢えて架空のストーリーで綴った作品。ゴシップを排し、歌手としての葛藤に絞った着眼点は良いものの、演技以上に心に響くテーマが無いのが残念でした。
 とにかくこの映画は、主演のファニー・アルダンの魅力に尽きます。「8人の女たち」でも異彩を放っていたものの、この映画での彼女の存在感はそれを上回るもので、伝説のオペラ歌手を余すところなく体現しています。カラスの葛藤などに関するドラマ的な掘り下げがあくまで通り一遍なのもあって、ただただアルダンの演技に見とれるばかりでした。カラスに思い入れがある人ならそれで十分楽しめるでしょうが、知らない人が観たら辛いところです。惜しい。

 劇中で流れる「カルメン」の出来が素晴らしく、もしそれだけで一つの映像作品になっているのなら発表してほしいぐらいでした。DVDには収録されていないみたいですが…。

監督:フランコ・ゼフィレッリ
出演:ファニー・アルダン、ジェレミー・アイアンズ、ジョーン・プロウライト
20060311 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

8人の女たち

 フランス映画界の俊英、フランソワ・オゾン監督によるミュージカル。女性同士の憎しみや企みなどを巧みに盛り込んだシナリオを、様々なジャンルの音楽で飾った内容は豪奢そのものでした。
 女優一人ごとにメインになる曲があり、それを順番に歌っているうちに話も進むというトリッキーな展開。女性のしたたかさが存分に描かれた脚本もなかなか見物です。しかし何と言っても、この映画の一番の見所は出演している女優の豪華さでしょう。映画ファンなら唸ってしまう名優ばかりで、一つの画面に収まっているだけでも圧巻なのに、そんな彼女達が歌って踊っていがみ合うというこの企画自体に絶対的な魅力があります。犯人探しなどそっちのけで、女性たちの駆け引きを楽しんでしまいました。”女性の醜さ”を描くのに美女ばかりを配し、取っ組み合いまでさせたあげくコメディに仕立ててしまうオゾン監督のセンスは凄いなあ、と。

 ドヌーヴとアルダンの演技合戦は必見。エマニュエル・ベアールも久々に良かった。とにかく分かりやすくて楽しい映画でした。フランス映画をあまり知らない方でも、ぜひ。

監督:フランソワ・オゾン
原作:ロベール・トーマ
出演:ヴィルジニー・ルドワイヤン、リュディヴィーヌ・サニエ、カトリーヌ・ドヌーヴ、エマニュエル・ベアール、ダニエル・ダリュー、イザベル・ユペール、ファニー・アルダン、フィルミーヌ・リシャール
20060310 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

テルミン

 デジタル音源の黎明期に発明され、ホラーやSFといった映画に使われた楽器「テルミン」と、その製作者レフ・セルゲイヴィッチ・テルミン博士を巡るドキュメンタリー。歴史の彼方に忘れ去られようとしていたテルミンを再発見した、貴重な作品です。
 テルミンの音楽性や技術的な話題に終始すると思っていたら、発明者であるテルミン博士の人生の足跡をたどるような内容でした。しかもその博士のたどった人生というのが実に奇妙。ハリウッドで人気を博したと思ったら、スターリンの粛正に巻き込まれ……といった事実を、資料と調査であぶりだしていく丁寧な手法は、ドキュメンタリーとして良くできています。何より半世紀以上の時を経て、再び見いだされた人々と楽器の”再開”には感動させられました。

 世界初の電子楽器テルミンについて、少しでも興味のある方は必見。自らが作り出した楽器と同様、非常に数奇な運命をたどったテルミン博士の人生は、それ自体がファンタジーで驚かされました。なお博士自身は、まるでこの映画が作られるのを待っていたかのように、映画の完成直後に亡くなられています。合掌。

監督:スティーヴン・M・マーティン
出演:レオン・テルミン、ブライアン・ウィルソン、トッド・ラングレン
公式サイト
20060309 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ

 ギタリストのライ・クーダーが、キューバ音楽に魅せられて製作した同名のアルバムをめぐるドキュメンタリー。キューバ音楽の、時を経ても色褪せない魅力がたっぷりと詰まった佳作です。
 僕はキューバ音楽に詳しいわけではないので、細かい解説は余所に譲ります。ただ、コンパイ・セグンドやエリアデス・オチョアといったキューバの老ミュージシャンたちの演奏は想像以上にパワフルで、しかも中には90を過ぎた人もいるのになおセクシーなのには驚かされました。音楽で人生を語れる彼らは純粋に魅力的ですし、その言葉の裏にはキューバの過酷な歴史が明確に存在しています。そういった厚みを観客に意識させた上で見せる、ラストのカーネギーでのコンサートは、これはもう反則。全てが美しくて、ただ惚れ惚れするばかりでした。

 もちろんアルバムも購入しました。どの曲も名曲ですね。もう随分聴き込んでいるので、今観ると多分映画の評価も上がってしまうだろうなあと思いつつ、一応初見の時の評価のままで。だって素材の良さが映像を上回ってるんだもの。

監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ルベーン・ゴンザレス、イブライム・フェレール、ライ・クーダー、オマーラ・ポルトゥオンド、エリアデス・オチョア、コンパイ・セグンド、ヨアキム・クーダー
20060308 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

スクール・オブ・ロック

 常にひと癖ある映画を撮り続けるリチャード・リンクレイター監督による、コテコテスポ根風味のロック映画。ファミリー向け映画のふりをして、実はロック好きの精神が詰まった佳作です。

 ジャック・ブラック演じるニセ教師のキャラクター自体はスポ根にありがちなものの、教えるのが”ロック”というのが斬新でした。ロックの歴史を知らなくてもそれなりに笑えますが、知っている人には堪らない濃さの授業は一見の価値あり。観れば誰もが「ロックの杯を掲げ」たくなります。演奏される音楽や使っているギターなんかもいちいち気が利いていて、その上ジャック・ブラックの大げさすぎる演技に爆笑させられてしまいました。
 とにかくこのジャック・ブラックの破天荒な教師ぶりは必見です。もともと、脚本家で映画に出演もしたマイク・ホワイトが、無名時代からの盟友であるジャック・ブラックのために書いた脚本だそうで、ハマらないはずがありません。子供たちの配役も絶妙で、中には既にプロとして活躍している人もいるという懲りよう。非常に大ざっぱな脚本ですが、彼らの勢いに感情移入してしまって、最後は涙してしまいました。

 そういえば、僕も小学校の頃こういう先生に教わったことがありました。校内放送で校長から怒られても雪合戦を止めなかった山田先生は最高の恩師ですが、今ではそういう先生は少ないのかも。そんな現代に対する”反抗”という意味でも、”ロック”は分かりやすいヒーローなのでしょう。ご都合主義大歓迎な方はぜひ!

監督:リチャード・リンクレイター
出演:ジャック・ブラック、マイク・ホワイト、ミランダ・コスグローヴ、ジョーイ・ゲイドス・Jr、サラ・シルヴァーマン 、ジョーン・キューザック
公式サイト
20060307 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

 本国アメリカでは記録的な大ヒットとなった舞台劇を、舞台と同様ジョン・キャメロン・ミッチェルの監督・脚本・主演で映画化し、2001年度のインディペンデント映画界において最も話題をさらった作品。予告編のビジュアルからはトリッキーな印象を受けたんですが、実際観ると非常に普遍的な物語で驚かされました。
 アウトサイダーに対する偏見や差別を切り口にしつつ、描かれているテーマは非常にスタンダードで、観れば誰にでも判る明快な主張というのが面白い。主人公ヘドウィグは、外見こそ一般性から外れていますが、その感性はむしろ繊細で、赤裸々に綴られる彼の人生観はダイレクトに観客自身の理性を突き刺します。見方によっては陳腐にも思えるのでしょうが、それをロックに乗せて堂々と語りきっているところが潔く、その真摯な歌詞に思わず涙することもしばしば。映画の構成としては、巷間に溢れる”プロモーションビデオ映画”と何ら変わらないんですが、そこに強烈なテーマを介在させることで一気に映画的にするという手法も斬新でした。

 ジョン・キャメロン・ミッチェルのヘドウィグは、それだけで映画史に残せそうなぐらいのカリスマ性で魅せてくれます。彼の生き様がひたすら美しく、辿り着いた観念的なラストも良い。「自分の片割れ探し」という題材で、この結論に行き着くのは僕の理想。文句なしの傑作です。

監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
出演:ジョン・キャメロン・ミッチェル、マイケル・ピット、ミリアム・ショア、スティーヴン・トラスク、アルバータ・ワトソン
20060306 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -

ムーラン・ルージュ

 バズ・ラーマン監督の"レッド・カーテン三部作"の完結編となるミュージカル映画。期待をはるかに上回る内容に驚かされました。正統派ミュージカルのベクトルを現代的に発展させつつ、とことんまで極めたような印象です。
 まず何と言っても音楽が凄い。有名な曲ばかりなものの、それを映画の雰囲気に合わせてアレンジしてあって聴き応えがありました。そして、セットも衣装も豪華絢爛。そこにバズ・ラーマン監督の縦横無尽の演出が加わって、あまりの情報過多にクラクラしますが、それが観ているうちに不思議にトリップ感へと変わります。音楽シーンにこだわったためなのかシンプルすぎるほどの脚本も、それだけ純粋で分かり易く、かえって映画に骨太な印象を与えていました。

 俳優では、ユアン・マクレガーとニコール・キッドマンのカップルが、何より非常に画になっています。あとジョン・レグイザモがロートレックを演じているというのもツボ。現代ハリウッドらしい、映像も音楽も盛り沢山のミュージカル大作として、大満足の出来でした。DVDはもちろん、写真集もサウンドトラックも”買い”です。

監督:バズ・ラーマン
出演:ユアン・マクレガー、ニコール・キッドマン、ジョン・レグイザモ、ジム・ブロードベント、リチャード・ロクスバーグ
20060305 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -