★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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未来世紀ブラジル

 テリー・ギリアム監督によるSF映画の傑作。ギリアム監督のシニカルな面が存分に発揮された物語で、夢と現実の交錯する構成が見事な、カルト映画の代名詞のような作品です。

 何処が良いかと聞かれても、あまりに荒唐無稽な内容なので、とにかく一度観てくれと言うしかありません。物語そのものも非常に魅力的ですが、それが映像を伴ったときに発揮される焦燥感はギリアム作品の中でもダントツ。随所に挿入されるブラックユーモアや、無機的で白が基調の都市と有機的で猥雑な夢の対比、あまりに衝撃的で救いのないラストも良い。
 それにしても豪華な映像には参りました。近未来の巨大なビルや、主人公の見る悪夢の世界を完璧に映像化したセンスには脱帽。どれも存在感があって、かつ「ありえない」感じが良く出ていました。中でも拷問室のセットは無言の圧迫感があり、映画の不気味さを引き立てています。物語がダークで混沌にまみれている中で、音楽だけが明るくポップなのも皮肉が効いていて良かった。

 シナリオを真面目に追って考え込むより、そこに秘められたブラックさに笑いつつ、カラフルな映像を楽しむのが目的でしょう。SFという世界観のファンタジーであり、チャンネルが合う人には最高のトリップ・ムービーかと。こういう映画を観てしまうと、普通の映画ではもう物足りなくなってしまいますね。

監督:テリー・ギリアム
出演:ジョナサン・プライス、キム・グライスト、ロバート・デ・ニーロ、イアン・ホルム、キャサリン・ヘルモンド、ボブ・ホスキンス
20051223 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -
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