★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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マトリックス

 『バウンド』でその才能を認められたウォシャウスキー兄弟による、SFアクション映画のカルト的作品。VSFXを多用した独特の演出や、当初から3部作を意識した作り、オーストラリアでの撮影など、以降のハリウッド映画に多大な影響を残しました。

 仮想世界とコンピュータの反逆という題材は『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』をはじめハードSFにはありがちですし、ハリウッドにも『トロン』『バーチャル・ウォーズ』など、試みに終わったものや無名のものなら何作かありますが、ここまでしっかりと描いたのはこの映画が初めてでしょう。その設定をうまく活用した超人的なアクションや、仮想世界へダイブする感覚などは、パソコン世代としては強烈なカタルシスを覚えました。敵側のプログラムを擬人化して分かりやすくしたのも勝因の一つ。このエージェント・スミスというキャラクターがしっかりしていたので、グダグダになりそうな話に一つ芯ができています。しかし終盤の展開はあまりに予定調和。ここに一工夫あれば評価も大きく変わっていたのではないでしょうか。
 キアヌ・リーヴスはこういう人間離れした主人公の役には本当によくハマります。しかし演技という点では他の俳優も含め特筆すべきものはありません。一方、カメラワークはセンスが光っています。有名なバレットタイム撮影に限らず、独特のカット割りや置きパンなどのセンスは、新人監督とは思えない熟練ぶり。ただそれもSFX中心のカットになると途端にレベルが落ちるのが残念でした。

 どこかカッコつけすぎの感も否めないので、世界観に入り込めなければこれほど滑稽な映画もないかもしれません。しかし仮想世界や近未来といったSF的要素に興味がある人ならハマる可能性は高いのでは。続編はグダグダになってしまいましたが、この作品は観る価値がある、と思います。

監督:アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー
出演:キアヌ・リーヴス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス、ヒューゴ・ウィーヴィング、ジョー・パントリアーノ、グロリア・フォスター
20110529 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ミックマック

 『アメリ』『ロスト・チルドレン』のジャン=ピエール・ジュネ監督がダニー・ブーンを主演に迎えて撮った久々のコメディ作品。いかにもジュネ映画という既視感でいっぱいでした。

 今回も奇妙な主人公、奇妙なエピソード、奇妙な仕掛けが集まって、とにかく奇妙な物語が展開するジュネのファンにはお馴染みの内容。しかしどこか空回りしているように感じたのは、ダニー・ブーンに貫禄がありすぎたからかも。彼なら仲間の力に頼らずとも、一人で全て解決できそうなので、説得力に乏しくなってしまいました。あと、ヒロインがそっちなの!?というのも個人的には不満。うーん。
 イタズラは相変わらずの完成度。特に今回はテーマにもなっているので、思わず拍手したくなる仕掛けもいくつか。音楽もおもちゃ箱から飛び出したようで映画の雰囲気に合っています。撮影監督は『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の撮影で急遽抜けたブリュノ・デルボネルに代わり永田鉄男が担当。色彩表現は素晴らしいものの、立体的なカメラワークが必要な場面で首をかしげるところがいくつかあったのが残念。

 細かいところでは、オープニング・クレジットがひねってあって最初から笑わされました。ジュネ映画には珍しく爽快な内容なので、気軽に楽しみたいという方もぜひ。

監督:ジャン=ピエール・ジュネ
出演:ダニー・ブーン、ドミニク・ピノン、ジャン=ピエール・マリエール、ジュリー・フェリエ、マリー=ジュリー・ボー、アンドレ・デュソリエ、ニコラ・マリエ
20110328 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

めいとこねこバス

 三鷹の森 ジブリ美術館でのみ上映される、宮崎駿監督による14分の短編アニメ。「となりのトトロ」の後日談的な内容で、映像自体は生き生きとしているのに、心の底から楽しめる内容ではありませんでした。
 前半の“こねこバス”との邂逅までは良い。こねこバスのいかにも小動物な動きや、ふさふさした毛並みなどはさすがジブリと唸らされる作画もあって楽しめます。しかしそこから先、話が無駄に大きくなってしまい、暗示的になっていくところで興ざめ。これはトトロの世界観とも違うような気がするんですが、どうなんでしょう。

 近年の宮崎アニメは話を大きくしすぎて、小さな感動を忘れているような気がします。新しいことにチャレンジするのも良いんですが、もう昔のような宮崎アニメは作られないのかも、と思うと残念しきり。

監督:宮崎駿
出演:坂本千夏、宮崎駿
20081112 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

魍魎の匣

 京極夏彦による人気ミステリ小説シリーズの映画化第二弾。前作完成後に逝去した実相寺昭雄に代わり、実力派の原田眞人が監督になったものの、作品自体はどこかちぐはぐになってしまいました。

 前作のような膨大な台詞を廃止して原作の要所要所を抽出したシナリオは、なかなか練り込まれていて特に前半は期待させられます。しかし後半になるにつれてスケール感が落ち、最終的にはドラマがどこに落ち着きたいのか分からないまま映画が終わってしまいました。黒木瞳をヒロイン扱いしたかったんでしょうが、久保竣公の存在意義より美馬坂幸四郎の美学をテーマに持ってきたら、この話をここまで長々とやる意味がありません。
 昭和初期の東京を再現するための上海ロケは、水路など東京らしくない風景も多く、一長一短だったようです。急病で降板した永瀬正敏の代役の椎名桔平も、貫禄がありすぎて関口クンらしく見えないのが残念。ただ堤真一の京極堂は相変わらずハマリ役。あと田中麗奈の中禅寺敦子も前回より似合ってました。

 原作モノの映画化という場合、原作のテーマを再現するのか、もっと別のテーマの元に物語を再構築するのかという二者択一があると思いますが、今回はそのどちらにも焦点を絞り込めなかった印象です。前作からの脱却という課題もあったんでしょうが、それで映画自体を見失っては本末転倒のような。

監督:原田眞人
原作:京極夏彦
出演:堤真一、椎名桔平、阿部寛、宮迫博之、田中麗奈、黒木瞳、マギー、荒川良々、篠原涼子、宮藤官九郎、柄本明
20081103 | レビュー(評価別) > ★ | - | -

モモ

 ドイツを代表する児童文学作家ミヒャエル・エンデによる原作を西ドイツ/イタリアの共同制作で映画化したファンタジー作品。原作の持つ雰囲気を丁寧に再現した映画になりました。

 子供時代に観たときは、とにかく「時間泥棒」たちの雰囲気が怖く、またモモとその周辺の人間関係の暖かさと独特のファンタジー表現にひたすら目を丸くして見入っていました。
 大人になって改めて観てみると、セット撮影の限界や原作のエピソードの省略など、小さくまとまってしまった点が気になりましたが、それでもファンタジー作品としては充分及第点の印象です。特に原作の哲学的な台詞回しを適度に抽出し、ストーリーに深みを持たせた脚本はいかにもドイツ映画らしく、今でも考えさせられる内容でした。

 何よりモモを演じたラドスト・ボーケルが非常にハマっていて、自分もモモの前に座って心を開いているような気持ちになれます。原作ファンならずとも心温まるファンタジーで、特に子供時代にこれを観られた自分は幸せだと思いました。

監督:ヨハネス・シャーフ
原作:ミヒャエル・エンデ
出演:ラドスト・ボーケル、ジョン・ヒューストン、ブルーノ・ストリ、レオポルド・トリエステ、マリオ・アドルフ
20081010 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

マルコヴィッチの穴

 MV界出身のスパイク・ジョーンズ監督の長編デビュー作にして、脚本家チャーリー・カウフマンの名を世に知らしめた秀作。飛び抜けたセンスは必見なんですが、理屈っぽくなってしまった物語が惜しい。

 実在の人物を題材に展開される奇想天外な物語が、観る前に想像していたものを遙かに凌駕する面白さで、特に中盤の悪夢のような展開には腹がよじれるほど笑わされました。ただ、どれも表層上だけの面白さで、通底するテーマがないので観終わってから残るものもありません。ひたすらナンセンスなのかと思いきや、SFっぽい理由付けがあるのも興ざめでした。
 主演のジョン・キューザックとキャメロン・ディアスは、それまでのイメージを払拭する好演。影の主役とも言えるジョン・マルコヴィッチは相変わらずキレた演技が見物です。ブラッド・ピットやウィノナ・ライダーなどのカメオ出演も驚きましたが、一番の見所はチャーリー・シーンかも…。

 一つのアイデアで通せばいいのに、補助的な要素を付け加えてしまって焦点がぼけたような印象。その“ごった煮”的な賑やかさを楽しめる人には良いんでしょうが、どこか空騒ぎめいていて素直に楽しめません。スパイク・ジョーンズの映像を楽しむために何度も観たくなるものの、物語としては一度で十分でしょう。

監督:スパイク・ジョーンズ
出演:ジョン・キューザック、キャメロン・ディアス、キャサリン・キーナー、オーソン・ビーン、チャーリー・シーン、ジョン・マルコヴィッチ
20060512 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

MEMORIES

 大友克洋の総監督によるオムニバスの劇場アニメ。SFやギャグといった、大友漫画の持つ異なるテイストを抽出した3つの短編は、それぞれ個性的で見応えがあります。
 シリアスなSFホラーが楽しめる「彼女の想いで」、濃いギャグとナンセンスさの「最臭兵器」、そして大友の欧州アニメーションへの愛が炸裂した「大砲の街」の3本で、どれも圧倒的な表現力にめまいがするほどでした。特に「彼女の想いで」の的確な演出と豪華な美術は、何度観ても唖然とします。「最臭兵器」の馬鹿アクションと、山梨ローカルぶりも必見。ただ、「大砲の街」の感覚は、劇場公開時こそ新鮮でしたが、ヨーロッパのアニメを多数観てしまってからだと、どうしても見劣りしますね。その辺りが残念。

 大友克洋の短編集を読んだことがある人なら、見知った空気を劇場で観られるのはやはり嬉しいでしょう。菅野よう子、石野卓球などが参加した音楽も個性的で良い。映画として小さくまとまってるので、もう一工夫欲しかった気はしますが、日本アニメのポテンシャルの高さを実感できる秀作です。

監督:森本晃司、岡本天斎、大友克洋
原作:大友克洋
出演:磯部勉、山寺宏一、飯塚昭三、高島雅羅、堀秀行、羽佐間道夫、大塚周夫、林勇、キートン山田、山本圭子、仲木隆司
20060429 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

もののけ姫

 「紅の豚」以来5年ぶりとなる宮崎駿の監督作。アニメーションのレベルは上がったのもの、考えすぎで尻切れトンボに見えました。
 相変わらずアニメの質は高く、特に自然物中心の背景はため息もの。試験的に導入されたデジタル処理もそれほど違和感はありません。そして物語はいつになく重厚。過去の作品で自然を賛美しすぎたことへの反省があるせいで、この作品では特に真摯な問題提起を行っています。これらが上手くハマっていればよかったんでしょうが、監督の自問自答はあくまで現実的な結論に落ち着いてしまって、ここまで壮大なファンタジーを媒介させる必要は感じられませんでした。

 「ジブリ映画の観客」にこういう映画を見せたかったんだろうとは思いますが、こんな複雑なテーマの作品は他の映画に任せて、ジブリにはジブリにしか出来ない作品を撮って欲しいと思うだけに納得できません。少なくとも、子供が観て楽しむ作品じゃないよなあ、と。

監督:宮崎駿
出演:松田洋治、石田ゆり子、田中裕子、小林薫、西村雅彦、上條恒彦、島本須美、美輪明宏、森繁久彌、森光子
20060409 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

魔女の宅急便

 角野栄子による人気児童文学を、宮崎駿率いるスタジオジブリがアニメ映画化。これまでの宮崎作品に比べると対象年齢が高めの、おっとりとしたファンタジーに仕上がっています。
 最初に観たときは良さが分からなかったんですが、大学生のころだかに観て、なかなか深いドラマに驚かされました。多感な年頃の少女の葛藤と、魔女の修行とが巧みに絡められたドラマはなかなか説得力があります。ウジウジ悩む話は嫌いなんですが、画家ウルスラのエピソードなどで方向性を示す分かりやすい展開でむしろウィットを感じました。アニメとしての作画なども秀逸で、主にストックホルムをモデルにした街のデザインはジブリ作品のなかでも屈指の美しさ。あと、ユーミンの曲を主題歌に使ったのも印象的です。

 最後の飛行船のシーンだけは無理矢理エンタテイメントさせた観がありますが、それでも宮崎作品らしい飛行シーンが楽しめるのは嬉しいところ。胸躍る冒険譚というより、じわりと心に染みるドラマです。

監督:宮崎駿
原作:角野栄子
出演:高山みなみ、佐久間レイ、戸田恵子、山口勝平、加藤治子、関弘子、井上喜久子、山寺宏一、西村知道
20060408 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

メン・イン・ブラック2

 ブラックな笑いでヒットしたSFアクションの、同一監督による続編。前作から余分なものを削って勢いを増したおかげか、ノリの良い単純アクション・コメディとして好感の持てる内容でした。
 モンスターのデザインが控えめになり、荒唐無稽なアクションシーンが増えたのが何より良かった。ストーリーもあってないようなもので、ヒロインの扱いもぞんざいならボスのやられ方まであっけなく、何から何までテキトーB級映画のお手本のような作品。ボリューム不足は残念ですが、くだらないジョークを笑い飛ばすだけという開き直りが感じられて、最後まで楽しめました。

 前作で嫌々やっていた節のあるT・L・ジョーンズが、喜々として出演しているのに何より驚きました。ウィル・スミスは相変わらずというか、むしろ板に付いてきた感じ。あと今作のカメオ出演者にはビックリ…! ソネンフェルド監督には、このままジョン・カーペンターへの道を着実に歩んでいって欲しいところです。

監督:バリー・ソネンフェルド
原作:ローウェル・J・カニンガム
出演:ウィル・スミス、トミー・リー・ジョーンズ、 ララ・フリン・ボイル、ロザリオ・ドーソン、リップ・トーン
20060328 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -