★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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ショーン・オブ・ザ・デッド

 本国イギリスで大ヒットを記録し、ホラー・コメディの新たな可能性を切り開いたカルト的作品。ブラッカイマー映画のような手法でゾンビ映画をパロディしまくる内容はインパクトがあります。

 素早いカットバックやスローモーションを用いた現代風の演出で、ひたすらしょーもないパロディを繰り出す作風は確かに新鮮。ただ、あまりに同じ演出と間抜けな展開が続くので、観ているこっちが息切れしてしまいます。そのせいか後半に出てくるシリアスな展開も、なんとなく上滑りしてしまって楽しめませんでした。こういう展開ならコメディの比重を少なくして、シリアスの中にコメディが混ざってるぐらいが丁度良かったかもしれません。
 僕でも分かるパロディがちょこちょこあったので、ホラー映画に詳しい人なら、それぞれのパロディ元が分かって一層笑えるのかも。ホラー映画好きを自負する人なら、一度は観ておくべき映画かもしれません。

監督:エドガー・ライト
出演:サイモン・ペッグ、ニック・フロスト、ケイト・アシュフィールド、ディラン・モーラン、ビル・ナイ
20110507 | レビュー(評価別) > ★ | - | -

jackass number two the movie

 ジョニー・ノックスヴィル率いるおバカ集団によるMTVの大人気シリーズの映画化第二弾。前作以上にノリが良い、ひたすら笑える作品でした。

 今回も、「自宅の階段でスキー」「生尻で電気椅子」「目隠しのまま闘牛と対決」「○○を蛇に噛ませる」などなど、やる前から結果の分かっている悪ふざけをあえてやってみた映像が目白押し。また、老人の特殊メイクをして街に繰り出すシリーズも過激さを増しています。なんでこんな頭の悪いことを思いつけるのかと、ただただ感心しつつも大爆笑させられた90分でした。
 この映画に関してはもう何も言うことはありません。自宅でお酒でも呑みながら大笑いして観るのには最適な最低映画です。ちなみに、今回は汚物系のネタが殆どなかったので、そういうのが苦手な方でも安心。頭が悪くなりたいときに是非。

監督:ジェフ・トレメイン
出演:ジョニー・ノックスヴィル、スティーヴォー、バム・マージェラ、クリス・ポンティアス、ライアン・ダン、デイヴ・イングランド、ウィーマン
20110501 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

バーン・アフター・リーディング

 豪華な俳優陣が話題になったコーエン兄弟お家芸の不条理ドタバタコメディ。若干軽い内容ですが、見た目の豪華さもあってなかなかの佳作に仕上がっています。

 どこにでもいそうな人々がどつぼに陥っていく様はいつものコーエン作品と変わりませんが、今回はジェリー・ブラッカイマー風の演出を徹底させることで、これまでと違った味わいを残しています。映画から得られるものも全くナシ!というところまでブラッカイマー作品そのまま。有名俳優と大仰な演出のおかげで、情けないドラマが余計ショボく見えて、なかなか笑わされました。『ビッグ・リボウスキ』『ファーゴ』のような情緒はありませんが、こういうのも悪くないかな、と。
 映画の作りについては文句なし。ここまでそつなく作ってくれる監督はなかなかいないでしょう。俳優もベテランだらけで安心して楽しめます。特に今回念願のコーエン作品初出演を遂げたブラッド・ピットの筋肉バカっぷりは見どころです。

 映画館で観たときはちょっと物足りなかったんですが、家でもう一度見たら大笑いできました。気楽なコメディとして楽しむのであれば最適な映画です。『オー・ブラザー!』『ディボース・ショウ』と並べて、クルーニー&コーエン三部作として楽しんでも良いかもしれません。

監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
出演:ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコヴィッチ、フランシス・マクドーマンド、ブラッド・ピット、ティルダ・スウィントン、リチャード・ジェンキンス、エリザベス・マーヴェル、J・K・シモンズ
20110409 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

ミックマック

 『アメリ』『ロスト・チルドレン』のジャン=ピエール・ジュネ監督がダニー・ブーンを主演に迎えて撮った久々のコメディ作品。いかにもジュネ映画という既視感でいっぱいでした。

 今回も奇妙な主人公、奇妙なエピソード、奇妙な仕掛けが集まって、とにかく奇妙な物語が展開するジュネのファンにはお馴染みの内容。しかしどこか空回りしているように感じたのは、ダニー・ブーンに貫禄がありすぎたからかも。彼なら仲間の力に頼らずとも、一人で全て解決できそうなので、説得力に乏しくなってしまいました。あと、ヒロインがそっちなの!?というのも個人的には不満。うーん。
 イタズラは相変わらずの完成度。特に今回はテーマにもなっているので、思わず拍手したくなる仕掛けもいくつか。音楽もおもちゃ箱から飛び出したようで映画の雰囲気に合っています。撮影監督は『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の撮影で急遽抜けたブリュノ・デルボネルに代わり永田鉄男が担当。色彩表現は素晴らしいものの、立体的なカメラワークが必要な場面で首をかしげるところがいくつかあったのが残念。

 細かいところでは、オープニング・クレジットがひねってあって最初から笑わされました。ジュネ映画には珍しく爽快な内容なので、気軽に楽しみたいという方もぜひ。

監督:ジャン=ピエール・ジュネ
出演:ダニー・ブーン、ドミニク・ピノン、ジャン=ピエール・マリエール、ジュリー・フェリエ、マリー=ジュリー・ボー、アンドレ・デュソリエ、ニコラ・マリエ
20110328 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

英国王のスピーチ

 英国王ジョージ6世にまつわる感動の逸話をトム・フーパー監督が映画化し、アカデミー作品賞ほか4冠を獲得した佳作。若い監督の意欲を感じる作品でした。

 中盤まではそれなりに楽しめますが、戴冠式前後で物語のリズムが崩れてしまうのが惜しい。主役であるジョージ6世のキャラクターは面白いのに、相手役ライオネルの性格付けが弱いため肝心なところで盛り上がりに欠ける印象です。どちらかの主観に物語を偏らせることで焦点を絞れば、メリハリのきいた作品になったかもしれません。
 俳優では、なんと言ってもコリン・ファースの演技が素晴らしい。吃音が自然すぎて演技に見えません。他の俳優もそれぞれ良い演技をしているんですが、チャーチル役にティモシー・スポールというのだけはちょっと……笑ってしまいました。

 台詞回しやカメラワークはイギリス映画らしく気が利いています。俳優も地味なようでいて豪華で、演技の良さも見所。ちょっと上品な、でもしっかり面白い映画を観たい方にはオススメです。

監督:トム・フーパー
出演:コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター、ガイ・ピアース、ティモシー・スポール、マイケル・ガンボン
20110323 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

オーシャンズ13

 スティーヴン・ソダーバーグ監督による、大ヒットシリーズ第三弾。今回は、エンタテイメントに徹した一作目と、アイドル映画を目指した二作目のいいとこ取りを狙った内容でした。

 ご都合主義ながらも精巧に練られた脚本や、豪華キャストはそのまま。今回新たにアル・パチーノとエレン・バーキンを加えて賑やかさを増していますが、物語自体が中盤でもたついてしまいました。大オチに向けて伏線を張りまくった反面、その間に大きな事件がないのが一因。それをごまかすためのジョークも笑えるのですが、かえって物語を見失うことに。結局どっちつかずに終わってしまった印象です。
 でも、俳優が嬉々として演じているのは相変わらず良かった。特にエレン・バーキンのはっちゃけ方は凄いです。マット・デイモンは今回もやらかしてくれますし、アンディ・ガルシアもどんどん可愛くなるし、クルーニー&ピットはもう恋人みたいな仲の良さ。肝心のアル・パチーノがいつも通りで終わっちゃったのだけが残念です。

 余談ですが、相撲や日本酒といった日本文化がそこここで登場して、こそばゆい気分になりました。一作目でもアンディ・ガルシアが日本語で挨拶してたなー。ともあれ、売り上げ至上主義のハリウッドにあって、こういういかにも豪華な企画が成立するというのは映画ファンとしては素直に嬉しいところです。あとは映画の出来が良ければ最高なんですが…。

監督:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモン、アンディ・ガルシア、アル・パチーノ、エレン・バーキン、ドン・チードル
20081019 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

銀河ヒッチハイク・ガイド

 イギリスのカルトSFコメディ小説の映画化作品。いかにもイギリス的な皮肉が楽しめるものの、映画としては若干まとまりにかける印象でした。

 壮大なのにどこか生活臭の漂う設定や不条理ギャグは、イギリスのコメディ好きにはたまらない内容ですが、全体に駆け足のストーリー展開のせいでメリハリが効いていない印象。オチが用意されている脚本なのでそこまで辿り着きたかったんでしょうが、ドタバタ珍道中だけでも充分楽しめるので、いっそオチは次回作に持ち越しても良かったのでは。
 声だけ出演のアラン・リックマンをはじめ、モス・デフやビル・ナイなど良い演技をする俳優を集めたのは良かった。画面の作り方も巧みで、CGもそこそこ馴染んでいただけに、109分で終わらせるのは勿体ない感じでした。1981年にテレビシリーズ化されているそうですが、そちらも気になります。

 ともあれ、冒頭のイルカの歌などブリティッシュ・コメディならではのブラックな笑いはふんだんに用意されているので、そちらを期待している方は楽しめるのでは。個人的にはアラン・リックマンの声だけでノックアウトでした。この人、意外とSF似合いますよね…… 。

監督:ガース・ジェニングス
原作:ダグラス・アダムス
出演:マーティン・フリーマン、モス・デフ、サム・ロックウェル、ズーイー・デシャネル、ケリー・マクドナルド、ビル・ナイ、ジョン・マルコヴィッチ、アラン・リックマン
20080930 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!

 「ショーン・オブ・ザ・デッド」でゾンビ映画マニアをうならせた新鋭エドガー・ライト&サイモン・ペッグによる長編第二作。今度は刑事映画のパロディを中心にはっちゃけています。
 「バッドボーイズ2バッド」「ドミノ」といった比較的最近のハリウッド映画の演出を用いて、どうでもいいシーンを過剰に盛り上げる悪ノリは面白いものの、終盤に至るまでそれ以外に物語を引き締める要素がないというのが辛い。その分、ラストではきっちり楽しませてくれるし、複線の絡め方なども上手いんですが、逆に上手くまとめすぎてしまってパンチが足りない印象です。俳優もなかなか豪華に使っていますし、何より主演コンビは出てくるだけで面白いんですが、これらもあまり生かし切れていない感じ。期待値が高かったこともあってか、もう一つ消化不良な作品になってしまいました。

 それでもコメディ映画としては普通に楽しめます。何より90年代のハリウッド映画を、タランティーノ監督のようにコラージュさせた演出の巧みさは見所。次はもっとセンスを爆発させた映画に期待です。

監督:エドガー・ライト
出演:サイモン・ペッグ、ニック・フロスト、ジム・ブロードベント、パディ・コンシダイン、ティモシー・ダルトン、ビル・ナイ
20080928 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

マルコヴィッチの穴

 MV界出身のスパイク・ジョーンズ監督の長編デビュー作にして、脚本家チャーリー・カウフマンの名を世に知らしめた秀作。飛び抜けたセンスは必見なんですが、理屈っぽくなってしまった物語が惜しい。

 実在の人物を題材に展開される奇想天外な物語が、観る前に想像していたものを遙かに凌駕する面白さで、特に中盤の悪夢のような展開には腹がよじれるほど笑わされました。ただ、どれも表層上だけの面白さで、通底するテーマがないので観終わってから残るものもありません。ひたすらナンセンスなのかと思いきや、SFっぽい理由付けがあるのも興ざめでした。
 主演のジョン・キューザックとキャメロン・ディアスは、それまでのイメージを払拭する好演。影の主役とも言えるジョン・マルコヴィッチは相変わらずキレた演技が見物です。ブラッド・ピットやウィノナ・ライダーなどのカメオ出演も驚きましたが、一番の見所はチャーリー・シーンかも…。

 一つのアイデアで通せばいいのに、補助的な要素を付け加えてしまって焦点がぼけたような印象。その“ごった煮”的な賑やかさを楽しめる人には良いんでしょうが、どこか空騒ぎめいていて素直に楽しめません。スパイク・ジョーンズの映像を楽しむために何度も観たくなるものの、物語としては一度で十分でしょう。

監督:スパイク・ジョーンズ
出演:ジョン・キューザック、キャメロン・ディアス、キャサリン・キーナー、オーソン・ビーン、チャーリー・シーン、ジョン・マルコヴィッチ
20060512 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

老人Z

 大友克洋原作、江口寿史キャラクター原案による、不条理な笑いと怒濤のアクションが魅力のアニメ。監督は、キレの良いアクションを得意とする北久保弘之。
 介護用ロボットの試作品に搭載されたコンピュータが暴走し、寝たきりのおじいちゃんを乗せたまま大暴走、といういかにも日本的なSFコメディぶりが最高。鎌倉を舞台に、モノレールやショッピングモールという見慣れた風景で繰り広げられるアクションは、緊迫感と爆笑の両極を備えていて、息つく暇もありません。最後はホロリとさせつつ、高齢化社会への提言も忘れなかったりして、コメディとはいえなかなか侮れない作品です。

 キャラクターでは、謎のハッカーお爺さんがツボでした。誰でも楽しめるドタバタコメディーアニメとして、非常にお薦めの作品。ぜひ。

監督:北久保弘之
原作:大友克洋
出演:松村彦次郎、横山智佐、小川真司、近石真介、辻谷耕史
20060430 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -