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ロスト・チルドレン

 ジュネ&キャロのコンビによる長編第二弾(マルク・キャロは美術監督として参加)。14億円という、フランス映画にしては莫大な予算をつぎ込み、巨大セットをいくつも建造して創り出したヨーロッパ世紀末的な世界観が凄い。僕もchako氏も、あらゆる映画の中でこの作品が一番好きです。

 前作「デリカテッセン」の完成度が高かったので、こんな大予算で、有名なスタッフを使って大丈夫なのかと心配したんですが、全くの杞憂でした。ダリウス・コンジの映像は色彩豊かなのに前作より焦点が定まって迫力がありますし、J=P・ゴルチエの衣装も、アンジェロ・バダラメンティの音楽も最高!
 しかし、やはり見どころはジュネ&キャロによる映像世界でしょう。登場人物に幅ができて華やかになったおかげで、絵本的でキッチュな世界観に磨きがかかっています。それだけでも楽しめるのに、ファンタジーとして最高級のシナリオがその世界観の中から自然に紡ぎ出される様は圧巻です。俳優も、特に主演のロン・パールマンとジュディット・ヴィッテの美女と野獣っぷりは必見。しかも前作で主役を演じたドミニク・ピノンが今回は6人のクローンで息の合った「共演」を繰り広げています。ジャン=ルイ・トランティニヤンが、脳味噌だけのクローン”イルヴィン”の声として出演しているのも良かった。

 あえて批判するなら脚本が雑多で、全体像がはっきりしないこと。また、感情移入する対象がいないのも問題かもしれません。暗めの映像を嫌う人もいるでしょう。でもその底知れない混沌こそ、この映画の最大の魅力なので仕方ありません。それこそ好きな人には最高に楽しめる、現代最高のお伽話です。ヨーロッパ映画の空気感と、メルヘンが好きな人はぜひ。

監督:ジャン=ピエール・ジュネ
出演:ジュディット・ヴィッテ、ロン・パールマン、ドミニク・ピノン、ダニエル・エミルフォルク、ジャン=ルイ・トランティニヤン
20051106 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -
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