★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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デス・プルーフinグラインドハウス

 タランティーノ&ロドリゲスが、かつての“グラインドハウス”映画にオマージュを捧げた二本立て作品のうち、タランティーノの監督したカーチェイス・ホラーを再編集した完全版。余裕すら感じるタランティーノの映画センスに脱帽です。
 完全にフレーミングを間違えているカメラ、露出過多の照明、尺を長くするだけの不必要な会話シーン、無駄に本格的なカーアクション、そしてあのラストなどなど、低予算映画にありがちな要素をふんだんに盛り込みつつ、本当にグダグダなB級映画に仕上げています。しかも悪役にかのカート・ラッセルを選び、スネーク・プリスキンばりの黒ずくめをさせる懲りよう。B級映画はあくまでB級映画なんだという、開き直りにも似た誇りを感じました。三池監督がタランティーノのうるさい解説付きで観たように、何人かでワイワイ観るのが楽しそうですね。

 女の子の会話がリアルなのは驚きでした。女体のエロさと音楽の良さも相変わらずで、やっぱりタランティーノは最高の映画オタクだと再確認。B級かぶれをウザいと思わない方にはオススメです。

監督:クエンティン・タランティーノ
出演:カート・ラッセル、ロザリオ・ドーソン、ゾーイ・ベル、、シドニー・タミーア・ポワチエ、ローズ・マッゴーワン、クエンティン・タランティーノ
20081028 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

THE HIRE

 BMWの広告映画として2001年から2002年にかけて製作され、BMWfilms.comで無料公開(現在は配信終了)された8つの短編作品。各10分程度の作品とはいえ、最高級のキャスト&スタッフで、しかも面白いんだから文句なしです。

 とにかく長編作品に負けない映像に驚かされました。BMWを登場させ、クライヴ・オーウェンをその運転手にするという共通点以外は全く自由に制作されたため、どの作品にも担当した監督の個性が存分に発揮されていて、非常に楽しめます。派手なカーチェイスや爆発があったり、粋なドラマがあるなどバリエーションも豊富。短編映画らしく話は小振りですが、どのシナリオもヒネリが加えられていているのも満足度を高めています。
 中でも、ストレートなカーチェイスで魅せる"Ambush"と、クルマの動きがひたすら芸術的な"Hostage"は必見。あと、ゲイリー・オールドマンとジェームズ・ブラウンの口喧嘩が笑える"Beat the Devil"とか、ガイ・リッチーらしい疾走感の"Star"なんかも好きです。こんなのが無料で楽しめるんだから、BMWは太っ腹だなあ、と。

 たまにHDDの奥から引っ張り出してきて観るんですが、何度観ても完成度の高さには唸らされます。広告としても非常に斬新な試みだったものの、まだまだインターネットが普及しきっていない時代で、しかも邦訳されていないので日本での知名度がイマイチなのが残念なところ。現在はサイトでの公開も終了し、DVDも入手不可能なのですが、どこかで見かけたら是非!

監督:ジョン・フランケンハイマー(Ambush)、アン・リー(Chosen)、ウォン・カーウァイ(The Follow)、ガイ・リッチー(Star)、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(Powder Keg)、ジョン・ウー(Hostage)、トニー・スコット(Beat the Devil)、ジョー・カーナハン(Ticker)
出演:クライヴ・オーウェン、ミッキー・ローク、マドンナ、ステラン・スカルスガルド、ゲイリー・オールドマン、ジェームズ・ブラウン、ダニー・トレホ、マリリン・マンソン、ドン・チードル、F・マーレイ・エイブラハム
20060427 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

ブルース・ブラザース 2000

 第1作より18年を経て製作された、カルト音楽コメディの続編。さすがにパワーダウンは否めないものの、前作のファンとしては一応観ておきたい作品です。
 今度はダン・エイクロイド&ジョン・グッドマンのコンビで、再びブラックな笑いを繰り広げています。お話の筋は前作と大して変わらない代わりに、相変わらずツボな音楽とカーアクションは存分に楽しめました。特に、前作以上に豪華なゲストを揃えてのセッションの数々は必見。ただ、何となく物足りない…。撮影技術が上がってしまっただけ、映像がショボいのが目立ってしまったような。まあ、それがジョン・ランディス監督らしいといえばらしいんですが。

 それにしてもジェームズ・ブラウンの若々しさには、この人は年を取らないのかと目を疑いました。音楽と爆発とくだらないギャグ満載の、あの世界をもう一度と思う人は、ぜひ。

監督:ジョン・ランディス
出演:ダン・エイクロイド、ジョン・グッドマン、ジョー・モートン、J・エヴァン・ボニファント、エリカ・バドゥ、ジェームズ・ブラウン、アレサ・フランクリン、B・B・キング
20060424 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ブルース・ブラザース

 今は亡きジョン・ベルーシの代表作にして、未だにカルトな人気を誇るB級コメディの伝説的傑作。映画全編を通して、どこにツッコめばいいのか分からないほどのナンセンスさは必見です。
 アクションもギャグも盛りだくさんの映画なんですが、それに輪をかけて豪華なミュージシャンの出演には驚かされます。ジェームズ・ブラウンのゴスペルで最初からノックダウンされ、あとは開いた口が塞がりませんでした。スタントマンが本気で逃げてるカーチェイスも凄い。100台以上のパトカーを惜しげもなく壊しまくり、あまつさえ軍隊を動員しての追走劇は、どんな派手なCGも敵わない非常識ぶり。もちろん細かいギャグもいちいち笑えるんですが、それ以上に映像の力でねじ伏せる笑いが最高に冴えていました。

 銀行員役で登場するスティーヴン・スピルバーグなんかも要チェックです。さすがに古い映画なので今の映画とは映像の質が違いますが、感心すら覚えるほどの破天荒さは何度観ても楽しめます。ぜひ。

監督:ジョン・ランディス
出演:ジョン・ベルーシ、ダン・エイクロイド、キャリー・フィッシャー、キャブ・キャロウェイ、ジョン・キャンディ、ジェフ・モリス、ヘンリー・ギブソン、ジェームズ・ブラウン、レイ・チャールズ、アレサ・フランクリン、ツイッギー、スティーヴン・スピルバーグ
20060423 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -

60セカンズ

 「カリフォルニア」のドミニク・セナ監督が、カーアクション映画の傑作「バニシングIN60」をリメイク。といっても内容は前作の作りとは違って、カーマニア同士の自己満足トークが炸裂するフェチ映画でした。

 もちろんカーチェイスにも力が入っているんですが、それが味付け程度に感じられるほど濃い喋りは必見。盗む車のラインナップもマニアックだし、車ごとに“実用的”な盗み方を披露してみたり(さすがに画面ではちょっとしか映しませんが)、分かりにくいところに小技が効いていて監督のこだわりが伺えます。物語はいたって平凡な兄弟愛もので、それだけにフェティシズムとアクションに集中できます。ハイ・コントラストでざらついた映像との相性も良いですね。
 主演はニコラス・ケイジ。予想通り、倒錯演技が嫌というほど似合ってました。デルロイ・リンドー、ロバート・デュヴァルといったシブい親父の演技が楽しめるのも一興。アンジェリーナ・ジョリーが完全に除け者扱いされているのも逆に笑えます。

 映画の構造自体は底の浅い娯楽作なのに、制作側の妙な思い入れのおかげでなかなか楽しめました。車を盗まれたことのある人は気持ち良いものではないでしょうが、クルマに思い入れのある人にはオススメ。

監督:ドミニク・セナ
出演:ニコラス・ケイジ、アンジェリーナ・ジョリー、ジョヴァンニ・リビジ、スコット・カーン、デルロイ・リンドー、ヴィニー・ジョーンズ、クリストファー・エクルストン、ロバート・デュヴァル
20060421 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

TAXi 3

 リュック・ベッソン製作・脚本の人気シリーズ第三弾。回を重ねて勢いは増したものの、なんとなく空回りしてしまいました。
 相変わらずのナンセンスぶりと無鉄砲なアクションは健在。人間ドラマにも厚みが増してみたりと、大忙しの内容になっています。ただ、今回は全体的にテンポの悪さが目立ちました。敵の設定が相変わらず弱いのは良いとしても、ちょっと特徴が掴めなさすぎ。アクションも尻すぼみで、特にラストのアレは不満です。せっかく雪山まで行ってあの程度だと……。交通事故数を減らしたいというフランス国内の情勢も関係しているようですが、やはり単純カーチェイス映画としては物足りなさが残りました。

 各所で言われている通り、オープニングはとにかく必見。その悪ノリは好きです。でも他は遊びすぎだなあ、と。

監督:ジェラール・クラヴジック
出演:サミー・ナセリ、フレデリック・ディフェンタール、ベルナール・ファルシ、マリオン・コティヤール、エマ・シェーベルイ、バイ・リン
20060420 | レビュー(評価別) > ★ | - | -

TAXi 2

 リュック・ベッソンが製作・脚本を担当する人気カーアクション映画の続編。目的が明確な映画作法で、続編なのに前作よりも楽しめたような。
 上映時間は前作と同じなのに、登場人物の紹介を割愛できただけチェイスシーンが増えて、前作の不満が一気に解消しました。ストーリーのうっちゃりかたも前作以上。特に今回は敵役が日本のヤクザで、主人公たちも慣れない日本語を披露してくれてなおさら笑えます。これが本当に日本を勘違いしているだけなら辛いんですが、劇中ではちゃんと「イタい外国人」として描かれていて凄いなあ、と。それに、パリ市内を暴走する千葉ナンバーのランエボがもう…!

 俳優陣も前作のまま。主演の二人も良いんですが、ここはやはりジベール署長役のベルナール・ファルシの(前作同様の)活躍こそが、この映画の肝と言ってもいいかもしれません。チョイ役の人々が、前作にも登場した人だったりするのがまた楽しかったり。
 監督のジェラール・クラヴジックは、前作でも臨時で監督を体験していたせいか撮り方が様になっていました。むしろ前作より迫力があって、しかも笑いをどこかに残したチェイスシーンは見物。何はともあれ日本人必見。観たあとで「ニンジャー!」と叫びたくなる秀作です。

監督:ジェラール・クラヴジック
出演:サミー・ナセリ、フレデリック・ディフェンタール、マリオン・コティヤール、ベルナール・ファルシ、エマ・シェーベルイ
20060419 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

TAXi

 リュック・ベッソンの製作・脚本による、カー・アクション・コメディの大ヒット作。マルセイユを250km/hオーバーで爆走するタクシー、というビジュアルだけで大満足です。
 実際にマルセイユの街の各所で撮影された、ホンモノのスピード感が楽しめるのがこの映画の見所。ピレス監督自身がレーサー出身ということもあって、プロのドライバーを多数起用してのチェイスシーンは迫力満点です。フレンチ・コメディらしい皮肉たっぷりの笑いを盛り込みつつ、犯人追跡関係の細部を思いっきり省略してしまうというのも、カー・アクション映画らしい割り切り方。欲を言えば85分という上映時間は物足りないものの、「とにかく高速チェイスさえ見られれば良いんだ!」という人には打ってつけの一本です。

 これでドラマがもうちょっとシェイプアップされていれば良かったんですが、そこは映画の本題とは違うので目をつぶりましょう。単純に「走り」を楽しむ映画として、非常に画期的でした。

監督:ジェラール・ピレス
出演:サミー・ナセリ、フレデリック・ディフェンタール、マリオン・コティヤール、ベルナール・ファルシ、エマ・シェーベルイ
20060418 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ドリヴン

 レニー・ハーリン監督がシルベスター・スタローンと組んで撮り上げたF1レース映画。単純バカレース映画を期待していたせいか、劇場で観たのが良かったのか、なかなかに楽しめました。

 何より、監督が苦手なセット撮影を一切行っていないのがミソ。撮っている題材自体の力強さも映像に負けていないので、観ていて騙されている感じがしませんでした。割り切りすぎの演出も、F1のスピード感を表現するためには必要かも、と思えてくるほどの勢い。ティル・シュヴァイガーの憎まれ役っぷりとスタローンの脇役っぷりも良いし、ドラマも単純で変に頭を使うことがありません。音楽がうるさいという噂でしたが、僕は気になりませんでした。
 難を言うなら、カット割りが激しくて何が起きているのか分からないのと、素人目には車を見ただけではチームの区別がつきにくいこと。でもそれは勢いで誤魔化して、ストーリーも適当にうっちゃって、全編をスピードとクラッシュで押し切るという監督の意図は充分表現できていると思います。「プロのレーサーがそんな無茶をやるかよ」というツッコミが必要かどうかは観た人の判断ですが、そこを我慢できるなら面白いのでは。

監督:レニー・ハーリン
出演:シルベスター・スタローン、キップ・パルデュー、エステラ・ウォーレン、バート・レイノルズ、ティル・シュヴァイガー
20051125 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -