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シティ・オブ・ゴッド

 ブラジル、リオデジャネイロ郊外の通称”Cidade de Deus(神の街)”を舞台に繰り広げられる、実話を元にした犯罪ドラマ。130分という上映時間に少しの無駄もない、むしろそれ以上の時間が凝縮された、爆弾のように強烈な映画でした。

 南米のスラム街が舞台で、少年と麻薬とギャングがテーマと聞いて暗澹としたムードを想像していましたが、映画は見事なまでにエンタテイメント。トリッキーな構図やカット割りも、きちんと脚本の意図を反映した演出になっているので、テンポが良くても軽薄になりすぎていません。しかし、何より驚かされたのは少年達の演技の凄まじさ。実際にスラムに暮らし、ドラッグや強盗や殺人と隣り合わせの世界に生きている少年達が演じているので、演技にも説得力がありました。
 ”神の街”の少年達は、今でも日常的に銃を持ち歩いているそうです。その現実を踏まえながらも、映画はその事態を断罪したりせずに、あくまでエンタテイメントに徹しているというのがショックでした。誇張して撮らなくても画面の端から滲み出るような暴力性がこの街には現存していて、だからこそ同情を惹くような演出はしないというのが潔い。実際、ドキュメンタリーにした方が良さそうな映画が氾濫する中で、この映画は「映画である価値」を確信できる傑作です。

監督:フェルナンド・メイレレス
原作:パウロ・リンス
出演:アレクサンドル・ロドリゲス、レアンドロ・フィルミノ・ダ・オラ、セウ・ジョルジ
20051213 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -
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