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 Facebookの創設者マーク・ザッカーバーグの半生を、奇才デヴィッド・フィンチャー監督が映画化。ハリウッド映画としては地味すぎる、難しい題材ですが緊迫感溢れる見事な映画に仕上げています。

 主人公であるマーク・ザッカーバーグは一見「嫌なヤツ」ですが、ネット社会においては彼の性格は欠点ではなく、むしろ本質をストレートに表現できることがメリットにすらなりうることを映画は冷静に描いています。彼が中心となって巻き起こる数々の騒動は、IT業界に近い人であれば既視感すら覚えるはずです。
 物語は「孤独」をテーマとしているように見えますが、実はそれは脚本的な部分だけであり、そんなザッカーバーグの感じている「リアル」が、ネット時代に生まれた現代の若者にも少なからず共通するものだ、ということが映画全体のテーマになっているように感じました。このザッカーバーグという才能と彼の成功する経緯を描写することで、「いまネット社会で何が起きているのか」をフィルムに定着させることが、監督の目的だったのではないでしょうか。

 映像は、『ゾディアック』であえて古いフィルム撮影を再現したのとは対照的に、あくまで最近のハリウッド映画風にクリアにまとめてあります。キャストも、80年代生まれの若い俳優を採用して同時代性を強調。しかも多くのテイクを重ねることで、膨大な台詞にも関わらずベテランに負けない良い演技を引き出しています。
 音楽の合わせ方も上手い。全編に渡って過剰な演出も、若者中心である今作の内容と合っていました。こういった演出意図の明確さが、フィンチャー作品の魅力ですね。

 観終わってしばらくは、不思議な感動に胸の高鳴りがなかなか止みませんでした。『ファイト・クラブ』がX世代の自己発見映画だったように、この作品はその後のネット世代の自己発見映画として素晴らしい出来だと思います。その二作が同じ監督によって撮られたということは、偶然ではないはず。必見です。

監督:デヴィッド・フィンチャー
原作:ベン・メズリック
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、アンドリュー・ガーフィールド、ジャスティン・ティンバーレイク、アーミー・ハマー、マックス・ミンゲラ、ルーニー・マーラ
20110327 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -
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