★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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シャーロック・ホームズ

 コナン・ドイル作の世界一有名な探偵小説を、心機一転アクション大作として映画化。ホームズとガイ・リッチー監督という意外な組み合わせが、不思議なほどよくハマっています。

 今回のホームズは喧嘩っ早くて不精者で、これまでのイメージと違いとても英国紳士には見えません。しかしこのイメージは原作にも少なからずあるものなので、原作ファンとしては違和感はありませんでした。同じく武闘派でハンサムになったワトソン君との相性もバッチリで、21世紀らしいアレンジと言えるのでは。そもそも原作だってゴリ押し推理だらけの大衆向け娯楽小説なので、このぐらいの軽さが丁度良いというものです。随所に印象的なアクションをはさんだり、後半のこれでもかと盛り上げる展開も大作らしく、最後までしっかり楽しめます。
 監督らしいカメラワークも健在。特に冒頭のロンドン望遠からの一連のシークエンスなど、リッチー監督ならではの演出が映画に良い遊びを加えています。ハンス・ジマーによる音楽も印象的。惜しいのは、ホームズらしい“頭脳派”アクションが前半しか楽しめないこと。あのアイデアは素晴らしいので、後半でも活用して欲しかった。また俳優の演技も、準備期間が少なかったのかどこかぎこちないのが残念です。

 いくつか心残りはありますが、全体としてはとても素晴らしいアクション映画でした。既に次回作も動き始めているようですが、今回の勢いのままさらにパワーアップした映画になることは間違いないでしょう。今から公開が楽しみです。

監督:ガイ・リッチー
原案:ライオネル・ウィグラム、マイケル・ロバート・ジョンソン
出演:ロバート・ダウニー・Jr.、ジュード・ロウ、レイチェル・マクアダムス、マーク・ストロング、ケリー・ライリー、エディ・マーサン
20110407 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

処刑人II

 カルト的人気を博したアクション映画『処刑人』の続編が、度重なる延期の末にとうとう完成。前作ほどの勢いは感じられないものの、あのノリを再び映画で楽しむことができました。
 今回は前作のウィレム・デフォーに代わって、ジュリー・ベンツ演じる女捜査官が登場。彼女に追われつつも真の敵を探すという三つ巴の構図は前作と変わらず。妙なテンションのドラマや、捜査官がセイント達の犯行をプロファイリングする見せ場もそのまま。これだけ代わり映えしないと本来は不満なんですが、この映画に関してだけは不思議と嬉しくなるばかりでした。しかしデフォーの変態演技がないせいか、どことなく物足りなさを感じてしまった点だけは残念です。

 適度に軽い、しかしたっぷりのアクションで観終わったあとは満足という、こういったガンアクション映画には珍しい映画で、何より前作の雰囲気がもう一度楽しめたのが良かった。一作目と併せて観ておきたい作品です。

監督:トロイ・ダフィー
出演:ショーン・パトリック・フラナリー、ノーマン・リーダス、ビリー・コノリー、ジュリー・ベンツ、ジャド・ネルソン、クリフトン・コリンズ・Jr.、ピーター・フォンダ
20110403 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ソーシャル・ネットワーク

 Facebookの創設者マーク・ザッカーバーグの半生を、奇才デヴィッド・フィンチャー監督が映画化。ハリウッド映画としては地味すぎる、難しい題材ですが緊迫感溢れる見事な映画に仕上げています。

 主人公であるマーク・ザッカーバーグは一見「嫌なヤツ」ですが、ネット社会においては彼の性格は欠点ではなく、むしろ本質をストレートに表現できることがメリットにすらなりうることを映画は冷静に描いています。彼が中心となって巻き起こる数々の騒動は、IT業界に近い人であれば既視感すら覚えるはずです。
 物語は「孤独」をテーマとしているように見えますが、実はそれは脚本的な部分だけであり、そんなザッカーバーグの感じている「リアル」が、ネット時代に生まれた現代の若者にも少なからず共通するものだ、ということが映画全体のテーマになっているように感じました。このザッカーバーグという才能と彼の成功する経緯を描写することで、「いまネット社会で何が起きているのか」をフィルムに定着させることが、監督の目的だったのではないでしょうか。

 映像は、『ゾディアック』であえて古いフィルム撮影を再現したのとは対照的に、あくまで最近のハリウッド映画風にクリアにまとめてあります。キャストも、80年代生まれの若い俳優を採用して同時代性を強調。しかも多くのテイクを重ねることで、膨大な台詞にも関わらずベテランに負けない良い演技を引き出しています。
 音楽の合わせ方も上手い。全編に渡って過剰な演出も、若者中心である今作の内容と合っていました。こういった演出意図の明確さが、フィンチャー作品の魅力ですね。

 観終わってしばらくは、不思議な感動に胸の高鳴りがなかなか止みませんでした。『ファイト・クラブ』がX世代の自己発見映画だったように、この作品はその後のネット世代の自己発見映画として素晴らしい出来だと思います。その二作が同じ監督によって撮られたということは、偶然ではないはず。必見です。

監督:デヴィッド・フィンチャー
原作:ベン・メズリック
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、アンドリュー・ガーフィールド、ジャスティン・ティンバーレイク、アーミー・ハマー、マックス・ミンゲラ、ルーニー・マーラ
20110327 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -

スカイ・クロラ

 ベストセラー作家森博嗣による異色のSF空戦小説を、押井守監督で映画化。原作のファンなので押井守監督なのは嬉しい反面、不安もありましたが、それなりに面白く仕上がっていると感じました。

 原作の持つ独特の浮遊感やもどかしい空気を、あえて感情を廃し淡々と描くことで表現した演出はさすが。空戦での自由自在なカメラワークも、実写顔負けの迫力です。この空中と地上との対比や、台詞を減らして画面で語るあたりから、作品のテーマがにじみ出てくるところが良かった。実はラストは原作と全く違うんですが、テーマが一貫しているので不思議と違和感はありませんでした。むしろ原作のテーマをうまく補っていると感じたほどです。
 美術やアニメーションは、正直手を抜いているなという感じ。反面、空戦の演出やCGは、それがやりたかっただけなんじゃないか、というほど見応えがあります。声では、草薙水素を演じた菊地凛子が浮いていたのが気になったものの、あとは概ね合ってました。細かい所ながら、通信など英語でやりとりするところがとても自然な発音で、ちょっと感心。主題歌は思わず吹き出すほど下手な発音でしたが……。

 もともと掴み所のないテーマですしカタルシスもない物語なので、見終わって考え込むような映画なんですが、逆に言えば原作のそういうところを上手く映像化していたと思います。攻殻機動隊みたいに、OVAで残りの原作も映像化してくれたら文句なしなんだけどなあ。

監督:押井守
原作:森博嗣
出演:加瀬亮、菊地凛子、谷原章介、栗山千明、大塚芳忠、平川大輔、竹若拓磨、麦人、山口愛
20081118 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

スキヤキ・ウェスタン・ジャンゴ

 三池崇史監督が満を持して制作した、全編英語、オールスターキャストによる“スキヤキ・ウェスタン”。マカロニ・ウェスタンへの愛がごった煮にされた、まさにスキヤキのような作品でした。
 実は西部劇というものに造詣がないのでいつも困るんですが、この作品は珍しくそこそこ楽しめました。ドラマが中盤でダレるあたりは過去の三池作品通り。しかし単純にアクションを楽しませる力強さは流石です。村ひとつをまるまる作り出した美術も良い。そして、ジャンルに無知な人間から見ても、マカロニ・ウェスタンへの愛はひしひしと感じられました。タランティーノ映画のような精神性ですね。この何でもアリの世界観が楽しめるかどうかで評価が大きく分かれそうです。

 伊勢谷友介と木村佳乃の英語が上手いなあと思っていたら、二人とも海外生活経験があるとのこと。逆に佐藤浩市や香川照之は焦点を絞れずに苦労していた感じ。あと、いつもこの監督の音楽は素晴らしいと思うんですが、今作の主題歌も最高でした。北島三郎は日本最高のソウル・シンガーですね。

監督:三池崇史
出演:伊藤英明、伊勢谷友介、佐藤浩市、安藤政信、堺雅人、石橋貴明、木村佳乃、桃井かおり、香川照之、小栗旬、クエンティン・タランティーノ
20081022 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

接吻

 現代日本の焦燥感を描ける数少ない監督として一部に人気の万田邦敏による、異色の恋愛映画。やりたいことは分かるんですが、脚本が分裂気味。

 細かい矛盾は映画の本筋とは関係ないので目を瞑るとしても、肝心の“接吻”の意味が分からない。解説やインタビューでは“理屈ではなく感情的なもの”と解説されていたので、感情で理解できなかった僕には評価しかねます。本編中には他にも良いシーンはあるものの、どこか型にはめようとして、映画自体の流れがおかしくなっている印象を覚えました。
 しばらく考えて出た結論は、この映画は仲村トオル視点で成り立っている話なんだということ。彼の主観であればある程度納得のいく話なんですが、カメラワークで小池栄子の主観を演出してしまったため、映画が空回りしているのではないかと。ここで食い違ってしまったので、理屈と感情がちぐはぐになってしまったのだと思います。

 冒頭の、殺人に至るまでのシーンは凄い。ここだけ巧いなーと思ったら、ここだけ監督自身の脚本なんですね。いっそ全部監督が脚本してくれれば良かったのに、と思ってしまいました。

監督:万田邦敏
出演:小池栄子、豊川悦司、仲村トオル、篠田三郎
20081015 | レビュー(評価別) > ★ | - | -

サンシャイン2057

 すっかりハリウッド色が強くなったダニー・ボイル監督によるSFサスペンス。ストーリーより映像に力が入っちゃうあたりも相変わらずでした。

 SFというのは科学的かつ哲学的な骨子が重要である点でファンタジーやホラーとは一線を画していると思うのですが、この映画は極限状態のみに焦点を絞っていて、科学的な意味でのカタルシスが脇役になっています。それを良しとするかどうかで評価が分かれそうですが、僕は不満でした。ラスト付近のアプローチは面白いものの、その背後に哲学性が感じられないのは、過去の名作をなぞることにに力を注ぎすぎたからかもしれません。
 俳優では、「28日後…」から続いて出演のキリアン・マーフィーが期待に違わずフェロモンをふりまいていましたが、映画としてはかみ合っていないような。唯一良かったのは映像。宇宙空間の広大さと崇高さをここまでリアルに描いた作品は、近年珍しいのではないでしょうか。

 7年前に消息を絶った宇宙船という設定から「クライシス2050」を連想する方も多いのでは。図らずもこの映画は、それと似た印象ばかり覚えました。

監督:ダニー・ボイル
出演:キリアン・マーフィ、ミシェル・ヨー、クリス・エヴァンス、真田広之
20081007 | レビュー(評価別) > ★ | - | -

スプリガン

 たかしげ宙&皆川亮二による人気コミックを、川崎博嗣監督で映画化した劇場アニメ。ツカミは良かったものの、今ひとつパッとしない内容でした。
 案の定というか、原作の持つ世界観は再現できていません。アニメらしい重量感のない絵のせいで、どことなく空々しい雰囲気でした。アクションも、デジタルアニメならではの大胆なカメラワークが気持ち良いかと思ったらそうでもなく、むしろ昔からの動画技術をきっちりやっているシーンのほうが、安定していて楽しめました。あと脚本が最悪。掛け合いすら成立していない台詞の連続で、しかも単語が仰々しいだけの幼稚な会話に白けるばかり。ちゃんと原作を理解して作ってるのかすら疑問です。

 伝奇SFらしさもどこへやら。派手さを重視したカタルシスのない題材選択も失敗でしょう。アクションだけ見て下さい、という映画。

監督:川崎博嗣
原作:たかしげ宙、皆川亮二
出演:森久保祥太郎、子安武人、城山堅、相ケ瀬龍史
20060502 | レビュー(評価別) > ★ | - | -

スピード

 撮影監督として数多の作品を手がけてきたヤン・デ・ボンの監督デビュー作にして、純粋アクション映画ブームの火付け役になった爽快アクション。分かりやすい娯楽作、の一言に尽きます。
 車が高速で疾走するというのは、動的メディアである映画の長所を上手く捉えたテーマの一つで、その魅力を巧みに引き出している点でこの映画は高く評価できます。サスペンスの現場が高速で移動しているというのは、否応なく緊迫感が沸きますね。個々のアイデアは過去の名作映画に見られるものですし、物語的な目新しさも皆無ですが、組み立て方が巧みなので気になりません。あとデニス・ホッパーの、ふてぶてしい悪役ぶりも良かった。あまりに行儀の良い話なのが気になりますが、まあ万人向けのアクション映画としては妥当なのかなーと。

 マーク・マンシーナによるメイン・テーマも絶妙。単純にドカンと景気のつく映画が観たい、分刻みで畳み掛けてくるアクションを楽しみたい、という要求に見事に答えた作品でした。

監督:ヤン・デ・ボン
出演:キアヌ・リーヴス、サンドラ・ブロック、デニス・ホッパー、ジェフ・ダニエルズ、ジョー・モートン
20060425 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ソードフィッシュ

 映像美にこだわるドミニク・セナ監督の長編第三作。今回は前二作の長所を集めたような、完成度の高いエンタテイメント作品に仕上がっています。
 明らかに「狼たちの午後」を意識した単純な展開も、速いテンポで全く飽きません。過去の映画を引き合いに出しながら、映画論や犯罪論やらをぶつ悪役ガブリエルはかなり魅力的。悪漢小説ばりの掛け合いで物語を引っ張るのも、なかなか楽しめます。アクションを期待した人には物足りないところでしょうが、先入観を持たずに観れば大満足の娯楽作でした。あまり細かいことを突っ込まずに観られる人にお勧めです。ただ、冒頭の5分間の出来が最高だっただけに、本編でそのテンションを持続できなかったのは残念。ラストのどんでん返しも、むしろ蛇足かなあ。

 俳優陣もなかなか豪華。まだ名前が売れ始めたばかりで、演技に定評のある俳優ばかり選んでます。あとヴィニー・ジョーンズが、ちょっとしか見せ場はないんですが良かった。セナ監督には、この調子でカタいアクション映画を撮り続けてもらいたいところです。

監督:ドミニク・セナ
出演:ジョン・トラヴォルタ、ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー、ドン・チードル、ヴィニー・ジョーンズ、サム・シェパード
20060422 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -