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ゾディアック

 『セブン』『ファイト・クラブ』のデヴィッド・フィンチャー監督が、希に見る連続殺人事件の真相に迫ったクライム・サスペンス。監督の新たな可能性が伺える傑作でした。

 ひたすら犯罪の事実を追跡するような地味な内容なのに、最初から最後まで緊張感が持続する不思議な映画でした。これまでのフィンチャー作品らしくない、重厚さすら感じさせる演出で、肝心の殺人自体もそれほどエキセントリックに描かれていません。これは監督の角が取れたのではなく、あくまで原作の面白さをそのまま映画で見せようとした結果ではないかと。ゾディアックの不気味さをありのままに描くことで、当時の人々がその犯罪に取り憑かれた心理を再現し、それを観客に追体験させることこそが、この映画の目的なのでしょう。
 俳優では、ジェイク・ギレンホールとロバート・ダウニー・Jr.がとてもいい味を出しています。音楽の使い方も相変わらず上手い。ちなみに、この映画からフィンチャー監督は完全デジタル撮影に切り替えたとか。とてもそうとは信じられない、フィルム映画のような肌触りは監督のこだわりの賜物です。

 未解決事件なので終わり方もモヤモヤしますが、観終わったときの高揚感は他のフィンチャー作品に負けていません。考えさせるサスペンスを楽しみたい人にはぜひ見て欲しい映画です。

監督:デヴィッド・フィンチャー
原作:ロバート・グレイスミス
出演:ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr.、ブライアン・コックス、アンソニー・エドワーズ、クロエ・セヴィニー
20110423 | レビュー(評価別) > ★★★ | comments (0) | trackbacks (0)
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