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狼たちの午後

 1972年に起きた銀行強盗事件を下敷きに、シドニー・ルメット監督が制作したサスペンス映画。うだるような夏の暑さが、70年代の持つ熱狂した空気を感じさせる傑作です。

 単純な銀行強盗事件に留まらず、民衆を扇動しFBIすら登場させる犯人達のカリスマ性が良い。どこまで実話に基づいているのかは不明ですが、この映画によって描かれた当時のアメリカ社会に内在する問題には戦慄すら覚えました。回想シーンやモノローグを一切使用しない演出も、物語の重厚さを引き立てています。あくまで銀行強盗の顛末を時系列に沿って描くことで、混乱した現場の空気がひしひしと伝わってきました。
 まだ若々しいアル・パチーノが、銀行強盗役を鬼気迫る見事な演技でこなしています。相棒役のジョン・カザールや、出番は少ないんですがクリス・サランドンなど、出演陣も見物。

 劇中で何度も叫ばれる「アティカ!」は、事件直前の'71年に起き、多数の犠牲者を出したアティカ刑務所の暴動事件を指しているそうです。この言葉に野次馬が増長する場面など、忘れがたいシーンが多々ありました。70年代を代表する作品の一つでしょう。

監督:シドニー・ルメット
原作:P・F・クルージ、トマス・ムーア
出演:アル・パチーノ、ジョン・カザール、チャールズ・ダーニング、ジェームズ・ブロデリック、クリス・サランドン
20060126 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -
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