★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
詳細な評価基準についてはこちら

スカイ・クロラ

 ベストセラー作家森博嗣による異色のSF空戦小説を、押井守監督で映画化。原作のファンなので押井守監督なのは嬉しい反面、不安もありましたが、それなりに面白く仕上がっていると感じました。

 原作の持つ独特の浮遊感やもどかしい空気を、あえて感情を廃し淡々と描くことで表現した演出はさすが。空戦での自由自在なカメラワークも、実写顔負けの迫力です。この空中と地上との対比や、台詞を減らして画面で語るあたりから、作品のテーマがにじみ出てくるところが良かった。実はラストは原作と全く違うんですが、テーマが一貫しているので不思議と違和感はありませんでした。むしろ原作のテーマをうまく補っていると感じたほどです。
 美術やアニメーションは、正直手を抜いているなという感じ。反面、空戦の演出やCGは、それがやりたかっただけなんじゃないか、というほど見応えがあります。声では、草薙水素を演じた菊地凛子が浮いていたのが気になったものの、あとは概ね合ってました。細かい所ながら、通信など英語でやりとりするところがとても自然な発音で、ちょっと感心。主題歌は思わず吹き出すほど下手な発音でしたが……。

 もともと掴み所のないテーマですしカタルシスもない物語なので、見終わって考え込むような映画なんですが、逆に言えば原作のそういうところを上手く映像化していたと思います。攻殻機動隊みたいに、OVAで残りの原作も映像化してくれたら文句なしなんだけどなあ。

監督:押井守
原作:森博嗣
出演:加瀬亮、菊地凛子、谷原章介、栗山千明、大塚芳忠、平川大輔、竹若拓磨、麦人、山口愛
20081118 | レビュー(評価別) > ★★ | comments (0) | trackbacks (0)
<< レッドクリフ Part I :: main :: 鉄コン筋クリート >>

Comments

Comment Form

Trackbacks