★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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ロビン・フッド

 ケヴィン・コスナー主演の大ヒットアクション映画。非常にそつのない作りで、絵に描いたようなハリウッド映画に仕上がっていますが、それがこの映画の質には非常にマッチしていました。

 アクションあり、ユーモアあり、憎たらしい敵役あり、ラブロマンスありの、ハリウッド映画のお手本のような作品。大味ながら迫力のあるアクションシーンが満載で最後まで一気に楽しめるだけでなく、ファミリー向け映画としても安心して観ることの出来る良質のエンタテイメントです。
 初めて観たのは中学生の頃でしたが、ケヴィン・コスナーを差し置いて、モーガン・フリーマンとアラン・リックマンの二人に一気に惚れ込んでしまいました。その二人が好きな方も、ぜひ。ラストのファンサービスも粋ですね。

監督:ケヴィン・レイノルズ
出演:ケヴィン・コスナー、モーガン・フリーマン、クリスチャン・スレイター、メアリー・エリザベス・マストラントニオ、マイケル・ウィンコット、アラン・リックマン
20051005 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

バッドデイズ

 ジャン=ピエール・メルヴィル監督の55年作品「賭博師ボブ」のリメイク。大御所ハーヴェイ・カイテルと、若手のスティーヴン・ドーフの共演ですが、それほど話題にはなりませんでした。確かに今ひとつ華に欠ける内容ではあるものの、アクション映画としての完成度は非常に高くて驚かされます。

 犯罪の手口や、暴力シーンなどの描き方に迫力があり、作品全体の説得力を高めています。最初誰が主人公か分からないので悩むところですが、一度ストーリーが回り始めればあとは手に汗握る展開の連続で飽きさせません。絵に描いたような復讐物語で、役者も良いし、編集も良いし、ラブシーンも殆どないし、とりあえずアクション映画を見たいというときには十分すぎるぐらいの一本でした。
 個人的にはスティーヴン・ドーフが格好良くてついつい見てしまいましたが、映画的にはむしろハーヴェイ・カイテルが見所でしょう。バイオレンス描写は比較的控えめですが、一部演出で濃いところがあるので、苦手な人は敬遠した方が良いかもしれません。

 監督は渋い映画が得意なジョン・アーヴィン。オリジナルもちょっと気になりました。機会があったら観てみたいです。

監督:ジョン・アーヴィン
出演:ハーヴェイ・カイテル、スティーヴン・ドーフ、ティモシー・ハットン、ファムケ・ヤンセン
20051004 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

プライベート・ソルジャー

 ジョン・アーヴィン監督による、渋い雰囲気の戦争映画。油断していましたが、よく出来たドラマに感動してしまいました。思い入れが強すぎて本質を見失ったり、プロパガンダと化している大作映画より現実的で、何より映画として楽しめます。

 戦争をただのシチュエーションに留め、その中でもがく普通の人々を描きながら嫌みがないのに好感が持てました。戦場描写や兵器描写は割と少ないんですが、確実にツボをついてきます。肝心の戦闘シーンも地味で、全体に物寂しい展開と、ビジュアル的に全く売りどころがありません。そもそも選んだ題材が二次大戦終了間際、ヒュルトゲンの森での第28歩兵師団の激戦、という時点でマニア向け。
 でもそういった知識がない人でも、充分楽しめるのではないかと。伏線の張り方と人物描写のさりげなさで、かなり感情移入してしまいました。確実な脚本と演出があれば、ここまで映画の質が上がるという良い見本。もちろん、知識がある人にはもっと楽しめる映画です。

 邦題は「プライベート・ライアン」にあやかったものでしょうが、これは全く性格の違う作品でした。こういう戦争映画もアリだなあ、と。他人に勧めたい佳作。

監督:ジョン・アーヴィン
出演:ロン・エルダード、ザック・オース、ティモシー・オリファント、フランク・ホエーリー
20051003 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

ありふれた事件

 メインスタッフ3人が原案・監督・製作・脚本・撮影・主演・編集を兼ねるという超インディペンデントな、バイオレンス映画の問題作。「蝿を殺すように人間を殺す男」をカメラがひたすら追い続けるドキュメンタリー、という設定のフィクション。でも真に迫りすぎていて、本物のドキュメンタリーではないかと怖くなる瞬間すらありました。

 観ているものまで犯罪を犯したような気分にさせる、突拍子もない演出は見事。実験映画をたて続けに観ていた時期に観たので、かなりはまってしまいました。出演者が「本人」として登場していて、そのあたりも錯覚させる材料の一つになっています。特にブノワ・ポールヴールドの残虐性は凄い、というか酷い……。オチは上手くまとまりすぎでしたが、そうでもしないと救われない話なのでそれはそれで良いのかも。
 エンタテイメント重視の映画ではないので退屈なシーンもあるものの、実験的精神は抜群。見た目以上に精神的な残虐性が堪えるので、苦手な人にはお勧めできませんが、ハリウッド系の上品なバイオレンスが嫌いな人は是非。

監督・出演:レミー・ベルヴォー、アンドレ・ボンゼル、ブノワ・ポールヴールド
20051002 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

シャロウ・グレイブ

 アンドリュー・マクドナルド制作、ダニー・ボイル監督、ユアン・マクレガー主演というトリオの記念すべき第一作。監督にとってはこれがデビュー作ですが、非常によく作り込まれたサスペンス映画でした。
 とにかく、イギリス映画ならではのナンセンスさが最高! 最低限の登場人物(メインはたった3人!)で進む密室劇は、確かに強引な部分も多々ありますが、その後の展開が面白いので気になりません。「金の行方」という物理的な牽引力で映画を引っ張りつつ、そこに「人間の狂気」というエッセンスをサイケデリックな演出とともに加味しているあたりにセンスを感じます。何よりオチの気持ちの良さと、思い切ったカメラワークには驚かされました。

 本国イギリスでは記録的なヒットを飛ばしたというのに、日本公開は「トレインスポッティング」の直前だったとか。とてもそうは思えないほどスタイリッシュな映像センスも一見の価値ありですが、そんなことより「映画の楽しさ」を堪能できるのがこの映画最大の魅力でしょう。必見。

監督:ダニー・ボイル
出演:ユアン・マクレガー、ケリー・フォックス、キース・アレン、クリストファー・エクルストン
20050929 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

メルシィ!人生

 「奇人たちの晩餐会」のフランシス・ヴェベール監督による、軽妙なコメディ作品。コンドーム会社に勤める男が、ゲイだと偽ってリストラを回避しようとしたために起こる珍騒動を、あの手この手で笑い倒しています。一つ間違うと差別的にもなりかねないゲイという題材を、気持ちよく笑える映画に仕上げています。

 実際、映画館でこんなに笑わされたのは初めて。息ができなくなって、思わずスクリーンから目を逸らしたほどです。しかも力ずくの笑いではなく、俳優が黙っている瞬間が一番笑えるという、コメディとしても正当派的な内容。計算し尽くされたネタは、一つ一つは爆発的ではないんですが、小さな波をテンポよく続けることで高い効果をあげています。逆に、そのシーンだけ切り出しただけでは笑えないだろう、というネタも多くて、監督のセンスの良さに感動してしまいました。
 後半ちょっと失速気味ですが、それを怪優ドパルデューが何とか埋めて、無理矢理のラストもまあ良いか、という気持ちにさせるのは、物語の芯にしっかりとしたテーマがあるからでしょう。主人公のや周囲の人に感情移入できたので、短い上映時間がもったいないぐらいでした。

 ハマれば思い出すだけでいつまでも笑えるので、下ネタ・ホモネタに抵抗がない方は、ぜひ。

監督:フランシス・ヴェベール
出演:ダニエル・オートゥイユ、ジェラール・ドパルデュー、ティエリー・レルミット、ミシェル・ラロック、ジャン・ロシュフォール
20050928 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

記憶の扉

 イタリアの人気監督ジュゼッペ・トルナトーレによる、珍しく暗いムードのサスペンス・ドラマ。ポランスキーとドパルデューという配役の妙を楽しめます。
 暗い警察署の中でドパルデュー扮する謎の男が延々と尋問を受け続けるんですが、そのシチュエーション自体が事件の本質を上手く隠しています。最初はドパルデューとポランスキーの演技合戦にただ見とれていただけなのに、終わってみたら非常にトルナトーレ的な作品だったことに感動。小道具の使い方や、細かい台詞で伏線を張るいつもの方法論が、特にこの作品では効果的だったように思います。

 決して派手じゃないし、芸術的でもないんですが、大衆向けの「分かりやすい面白さ」がこの監督の魅力でしょう。ジャンルや先入観は頭から追いやってから観るのが正解です。

監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:ジェラール・ドパルデュー、ロマン・ポランスキー
20050927 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

遊びの時間は終らない

 「12人の優しい日本人」のプロデューサによる、なんとも日本映画らしいサスペンス・コメディの秀作。あまりに実直すぎる警官が銀行強盗役になったせいで、予行演習が一転して大事件に発展する様を巧みに描いています。

 冒頭からラストまで素早い展開で畳みかけつつ、細かい笑い一つ一つに必然性を持ってくるシナリオがとても魅力的。主人公対警察という構図が、次第にスケールを広げつつ周囲を巻き込んでいくあたりは、コメディ映画なのに感動的ですらありました。ここまでシナリオが秀逸な犯罪ドラマは、90年代の日本映画には少ないのでは。さりげなく豪華なキャストも見所。
 しかし何と言っても、この映画は主演の本木雅弘のための映画です。おそらく彼の魅力が最も良く引き出された映画ではないでしょうか。未見の方は、騙されたと思って是非。

監督:萩庭貞明
原作:都井邦彦
出演:本木雅弘、石橋蓮司、萩原流行、原田大二郎
20050926 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

デュエリスト/決闘者

 コンラッドの小説「決闘」を原作にした、風変わりな騎士道映画。リドリー・スコット監督はこれがデビュー作ですが、既に映像に対するだわりが見て取れます。70年代の映画の中でも間違いなくトップクラスの映像は必見。モノトーンに沈みがちなイングランドの風景を、朝焼けなどの微妙な光を利用して色彩豊かに描き出しています。
 ストーリーは二人の騎士の人生を追い続け、しかもそのほとんどが決闘シーンというのが妙ですが不思議と飽きさせません。決闘でしか通じ合えない頑なな主人公達の関係が、ナポレオン戦争前後という激動の時代と対比されて、とても印象的でした。

 77年作品で、しかも低予算なので大作映画のような派手なアクションはありませんが、落ち着いた味わいのある”決闘映画”でした。最近のリドリー・スコット作品しか知らない人は、ぜひ。

監督:リドリー・スコット
出演:キース・キャラダイン、ハーヴェイ・カイテル
20050925 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

ミラーズ・クロッシング

 ジョエル&イーサン・コーエン兄弟による3作目の長編映画。過去のギャング映画を強く意識しながら、あくまでオリジナリティ溢れる作品にまとめ上げています。

 ギャング映画とハードボイルドのエッセンスを凝縮したかのような密度の濃いストーリーが、美しい映像美の中で展開される様は圧巻。ドライで印象的なキャラクターや、さまざまな出来事が折り重なって事態がどんどん悪化していく様など、後のコーエン作品に顕著な魅力が、既にこの映画で完成されているあたりは凄いと思いました。
 ガブリエル・バーンのダメ男っぷりが最高に格好いい。あとはアルバート・フィニーとかジョン・タトゥーロとかスティーヴ・ブシェミとか……俳優だけでも見どころは満載です。映像も、フィルム・ノワールのように思わせて、重要な見せ場を昼や朝に持ってきて美しくキメてしまうあたりは流石。ちなみに、撮影監督はあのバリー・ソネンフェルド。

 最初に観たときはこの映画の魅力が全く分からなかったんですが、その他のコーエン作品などを観た後にもう一度観たらハマりました。ギャング映画というお約束の中ですら滲み出てしまう、この兄弟監督の強烈な個性というのが最大の見どころ、ということでしょう。

監督:ジョエル・コーエン
脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
出演:ガブリエル・バーン、アルバート・フィニー、ジョン・タトゥーロ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、スティーヴ・ブシェミ
20050922 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -