奇談
日本漫画界に燦然と君臨するカルト作家諸星大二郎の伝説的名作「生命の木」を小松隆志監督が映画化。伝奇ホラーの醍醐味が詰まった原作のニュアンスは再現できていましたが、微かな物足りなさを感じました。ひたすら単調なテンポで進行する物語が、かえって原作のまったりとした雰囲気を上手く再現しています。”隠れキリシタン”に関するケレンもしっかり語っているので、伝奇モノとしても見所はありました。ただ、”神隠し”という映画オリジナルの要素を加えたうえに、それがきちんと説明出来ていなかったのが残念。原作の「天神さま」とかのエピソードを踏まえているのかなあ、と推測することも出来ますが、それでも矛盾点が残るし…。
主演の阿部寛と藤澤恵麻は想像以上にハマっていましたし、ハナレの人々の壊れ具合も良かった。映像も、東北の寒村っぷりは予想以上に出ていて、ラストのCG処理なんかも十分だと思います。原作の独特の絵柄を何らかの形で映像として昇華して欲しかったのですが、さすがにそこまでの映像表現は無理だった様子。惜しいような気もするし、これで良いような気もするし、という感じで微妙でした。
もともとエンタテイメントにはなりにくい題材なので、これ以上の作品にするにはかなりの作り込みが必要でしょう。むしろ巧くまとめたとも言えますが……。原作ファンと、あと伝記モノに興味がある方は是非。
監督:小松隆志
原作:諸星大二郎
出演:阿部寛、藤澤恵麻、ちすん、柳ユーレイ、神戸浩、一龍斎貞水
公式サイト

20051209 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ニック・ホーンビィの小説を、ポール&クリス・ウェイツ兄弟監督が映画化したドラマ作品。現代のシングル男性を題材にした物語で、全体的に良くできているものの、何かパンチが足りないと感じました。
同名のベストセラー小説を、これまた女性のシャロン・マグワイア監督で映画化した話題作。イギリスでは社会現象化したというほどの人気小説ですが、映画自体はオーソドックスな恋愛モノでした。
ロジャー・ミッチェル監督による、「ローマの休日」そのままなラブ・ストーリー。隅から隅までどこかで見たような感じのする内容ですが、きちんと笑えて後味も悪くない、良くできた作品でした。
ウェールズ出身のクリストファー・マンガー監督が、出身地に伝わる逸話をもとに映画化したコメディ。”丘を登り、しかしながら山から降りてきた英国人”という意味の原題もユニークですが、内容もそれに負けないほど笑えて感動できる傑作でした。
台湾出身のアン・リー監督が、イギリスを代表する作家ジェーン・オースティンの「分別と多感」を映画化したラブ・ストーリー。典型的なコスチューム劇ですが、その良さを満遍なく盛り込んだ秀逸な作品でした。
コテコテのアクション映画が得意なロブ・コーエン監督による、絵に描いたような「ドラゴンもの」映画。お話しは相変わらずの出来ですが、単純に楽しめる作品でした。
宮崎駿監督が、自身の飛行機マンガを映画化したアニメーション作品。僕が初めて劇場で観た「ジブリ映画」で、当時は面白さがさっぱり分かりませんでしたが、大人になってから見直してみると評価が一変しました。これは大傑作です。
ラース・フォン・トリアー監督による「黄金の心」三部作のうちの一つ。観客に襲いかかるような容赦のない演出は健在ですが、同監督の作品の中では珍しく華のある内容でした。ただし、後味の悪さだけは健在。
デンマークの奇才、ラース・フォン・トリアー監督による異色のラブ・ストーリー。物語全体に漂う宗教観や映像美はこれまでのトリアー監督の作品同様ですが、今回はテーマ性を前面に押し出した、より感情を揺さぶられる作品に仕上がっていました。