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奇談

 日本漫画界に燦然と君臨するカルト作家諸星大二郎の伝説的名作「生命の木」を小松隆志監督が映画化。伝奇ホラーの醍醐味が詰まった原作のニュアンスは再現できていましたが、微かな物足りなさを感じました。

 ひたすら単調なテンポで進行する物語が、かえって原作のまったりとした雰囲気を上手く再現しています。”隠れキリシタン”に関するケレンもしっかり語っているので、伝奇モノとしても見所はありました。ただ、”神隠し”という映画オリジナルの要素を加えたうえに、それがきちんと説明出来ていなかったのが残念。原作の「天神さま」とかのエピソードを踏まえているのかなあ、と推測することも出来ますが、それでも矛盾点が残るし…。
 主演の阿部寛と藤澤恵麻は想像以上にハマっていましたし、ハナレの人々の壊れ具合も良かった。映像も、東北の寒村っぷりは予想以上に出ていて、ラストのCG処理なんかも十分だと思います。原作の独特の絵柄を何らかの形で映像として昇華して欲しかったのですが、さすがにそこまでの映像表現は無理だった様子。惜しいような気もするし、これで良いような気もするし、という感じで微妙でした。

 もともとエンタテイメントにはなりにくい題材なので、これ以上の作品にするにはかなりの作り込みが必要でしょう。むしろ巧くまとめたとも言えますが……。原作ファンと、あと伝記モノに興味がある方は是非。

監督:小松隆志
原作:諸星大二郎
出演:阿部寛、藤澤恵麻、ちすん、柳ユーレイ、神戸浩、一龍斎貞水
公式サイト
20051209 | レビュー(評価別) > ★★ | comments (0) | trackbacks (0)
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