ラスベガスをやっつけろ
原作者ハンター・S・トンプソンの実体験を元にした小説を、鬼才テリー・ギリアム監督が映画化。他のドラッグ系映画の追随を許さない、とことん下品で不条理で滅茶苦茶な作品でした。「トレインスポッティング」がドラッグ文化をあくまでスタイリッシュに描写していたのに対して、こちらは主観的に描写しているのが最大の特徴。つまりは麻薬でラリってる主人公2人の「見えているもの」を中心に物語が進むので、カメラは斜めに漂いっぱなし、何が現実に起こっているのかも判らない状態で、最後まで真実は明かされません。そういった主人公の、現実からの取り残され具合をテーマにした作品なので、それは必然でしょう。ヒッピーが70年代に入って終わりを告げ、ただの社会不適合者になった主人公たちがどういう価値観を持って生きているのか、それがこの映画の語りたいことであり、それは上手く表現できていると思いました。
しかしそういう理論をぶつ以前に、映像としてこの映画は楽しめます。何よりナンセンスな演出にかけては当代一のギリアムですから、次から次へと繰り出される意表をついた映像に驚かされているだけで2時間が過ぎてしまいました。主演のジョニー・デップは、今までの出演作では決して見せなかったようなオヤジっぷり全開でキめてくれますし、この撮影のために(つまり無駄に)20kg増量したベニチオ・デル・トロも迫真の演技でした。T・マグワイヤ、C・ディアス、C・リッチは本当にチョイ役ですが、特にC・リッチの存在感は抜群。こういう勢いだけで良い映画って、そうそうありません。
観終わって得られるものはゼロ、物語は何処にもない、ただただバッド・トリップの連続で焦燥感ばかりが募る映画です。でも、それこそ最重要テーマじゃないか、という吹っ切り方こそギリアム映画の最大の魅力ではないでしょうか。
監督:テリー・ギリアム
原作:ハンター・S・トンプソン
出演:ジョニー・デップ、ベニチオ・デル・トロ、トビー・マグワイア、キャメロン・ディアス、クリスティナ・リッチ

20051012 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -

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コンラッドの小説「決闘」を原作にした、風変わりな騎士道映画。リドリー・スコット監督はこれがデビュー作ですが、既に映像に対するだわりが見て取れます。70年代の映画の中でも間違いなくトップクラスの映像は必見。モノトーンに沈みがちなイングランドの風景を、朝焼けなどの微妙な光を利用して色彩豊かに描き出しています。
ダニエル・ウォレスによるファンタジー小説を、メルヘンの名手ティム・バートン監督が映画化。独特の悪趣味な世界こそ出てこないものの、おかげで非常に真っ当な感動作になりました。
革命家チェ・ゲバラの、その活動とは全く趣の異なる青年時代の旅を描いたロードムービー。ゲバラ本人の著作と、一緒に旅をした友人アルベルト・グラナードの著作を下敷きに、実際に南米を旅しながら撮影された映像は、説得力があって色々と考えさせられます。
「ピーター・パン」の原作者ジェームズ・バリと、物語のモデルになった少年一家の交流を描いた、半分実話、半分創作の映画。監督は「チョコレート」のマーク・フォスター。
「コーヒーと煙草」をテーマにジム・ジャームッシュが撮った短編集。もともとサタデー・ナイト・ライブの企画から派生したもののようですが、とにかくコーヒーと煙草をテーマに、登場人物たちのセンスの良い会話を楽しむ「だけ」というのが新鮮でした。それ以上の展開は無いので、知らないで観た人はかなり驚くんじゃないでしょうか。