★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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突破口!

 「ダーティーハリー」のドン・シーゲル監督が、「おかしな二人」のウォルター・マッソーを主演に迎えて放つ傑作犯罪アクション。顔に似合わずシリアスな活躍を見せたマッソーに惚れ惚れします。
 いきなり銀行強盗で登場し、その後もハードボイルド全開で活躍するウォルター・マッソーにただただ驚かされる二時間でした。典型的な逃避行タイプの物語ではありますが、女性との絡みや殺し屋の存在が絶妙。特にジョー・ドン・ベイカーの不敵な殺し屋モーリーの不気味さが、手に汗握る展開に拍車をかけています。70年代の映画なので映像自体は地味なんですが、それが全く気にならない、良くできたアクション映画だと感じました。

 ラストのひねり方はなるほどと頷いてしまう頭の良さで、そのためだけでもいいので観て欲しいと思えるほど。アクション映画に、派手さよりもシナリオの妙を期待するなら一押しの作品です。DVDもビデオも出てないのが残念な限り。

監督:ドン・シーゲル
出演:ウォルター・マッソー、ジョン・ヴァーノン、アンディ・ロビンソン、シェリー・ノース、フェリシア・ファー、ジョー・ドン・ベイカー
20060317 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

ホワイトアウト

 大作映画のヒットに恵まれていなかった日本映画界に一石を投じるはずだったアクション大作。「踊る大ハード」という下馬評通りで既視感たっぷりなものの、それなりに楽しめる映画でした。

 原作はかなり良くできたサスペンスで、ドラマもアクションも盛りだくさんなんですが、この映画はそれを最大限に再現していて好感が持てました。親友の死とか犯人グループの確執など、分かり易いドラマではあるものの、定番だからこそ安心して楽しめます。原作はそこに様々なドラマが絡み合い、かつダムという認知度の低い空間を最大限に生かした展開が見物だったんですが、映画でそのスケール感が損なわれてしまったのだけは残念でした。特にセット撮影の場面が辛い。ロケ部分の映像が良くできているだけにもったいないなあ、と。
 俳優では吹越満が良かった。原作では彼の動機がきっちり描写されているので、映画で物足りないと思われた方はぜひ原作を。佐藤浩市も、映画らしく脚色されたキャラクターを思いっきりふてぶてしく演じていて見応えがありました。松嶋菜々子が全然出てこないのも良いですね。

 確かに所々で詰めの甘さが目立つ、あまり褒められた作品じゃないんですが、これをパクリなどと言って一概に非難するのは疑問。というか、それなら最近の日本製大作映画なんか全部パクリじゃないのかと。下手にクセがなく後味も悪くないだけ、この映画はまだ救いがあります。

監督:若松節朗
原作:真保裕一
出演:織田裕二、松嶋菜々子、佐藤浩市、石黒賢、吹越満、中村嘉葎雄、平田満
20060221 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

漂流街 THE HAZARD CITY

 馳星周のバイオレンス小説を、日本映画界で最もパワフルな作風を誇る三池崇史監督で映画化した問題作。ブッ飛んだアレンジは流石ですが、ちょっと暴走しすぎかも。
 まず、どうみても国内には見えない(おそらくテキサス州あたりの)荒野を「埼玉県与野市」と言い切る勢いの良さに冒頭から笑わされました。それが本気なのか冗談なのか判断するヒマもなく、その後もマトリックス風の闘鶏や殺人卓球と、およそ平凡とはかけ離れた、しかも原作にない要素を絡めまくり。というか原作と大枠で同じ話なのに、ここまで印象が違うというのに驚かされました。それでも新宿歌舞伎町を中心としたトーキョーの混沌っぷりを、誇張しつつも実感たっぷりに描写しているあたりは三池監督のセンスを感じずにはいられないんですが、でも映画としては破綻しすぎかなあ、と。少なくとも、原作のようにシリアスなバイオレンスを期待すると大変なことになります。

 俳優では、チャイニーズ・マフィアのボスを演じた及川光博がピカイチ。とても日本人には見えません。吉川晃司もさすがの色気でした。そのあたりの遊び心を楽しみつつ、とんでもない展開にゲラゲラ笑える骨の髄からの三池ファンなら、観る価値はあると思います。

監督:三池崇史
原作:馳星周
出演:THEA、ミッシェル・リー、及川光博、吉川晃司、柄本明、テレンス・イン、野村祐人、麿赤兒
20060220 | レビュー(評価別) > ★ | - | -

鉄男 II BODY HAMMER

 塚本晋也監督の出世作である”鉄男”シリーズ第二弾。前作「鉄男 TETSUO」よりトーンダウンした観は否めませんが、相変わらずパワフルな映像は一見の価値あり。
 塚本監督は、今回も脚本・美術・撮影・編集をこなしたうえ、自らも出演するという力の入れよう。しかしカラーになり、映画としての体裁も整ってしまったためか、映像的な迫力ばかりが目について、映画本来のテーマが疎かになってしまったような。アクションシーンのスピード感は流石に見物ですが、前作のような”荒削りながらも強烈な映画体験”には、何かが足りない感じでした。

 前作に続いて主演を勤める田口トモロヲが、前作以上にバリバリのアクションをこなしているのは見所。映像や造形など、明らかに普通の日本映画とは一線を画す作品であることは確実です。

監督:塚本晋也
出演:田口トモロヲ、塚本晋也、叶岡伸、金守珍
20060218 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ヒルコ 妖怪ハンター

 諸星大二郎のカルト伝奇漫画「妖怪ハンター」を、当時まだ新進気鋭の塚本晋也監督が映画化したホラー作品。原作のイメージとはかなり乖離した内容ですが、これはこれで楽しめました。
 映画の内容は、同シリーズの単行本「海竜祭の夜」に収録された「黒い探究者」をメインにしつつ、そこに「赤い唇」が絡むといった感じです。ただ原作の持つおどろおどろしさは無く、非常に標準的なホラーといった印象。伝奇的なカタルシスは分かりやすく翻案されていますし、沢田研二も落ち着きが無くて稗田礼二郎という感じではありません。ただその沢田研二と、まさお少年役の工藤正貴の掛け合いがなかなか巧みで、”少年のひと夏の体験”といった爽やかさすら感じました。室田日出男の強面も、物語を引き締めるのに一役買っています。最後の演出は、さすがにどうかと思いましたが…。

 全体にちぐはぐな印象の映画ではあるんですが、パワフルな映像と俳優に助けられて、後味は悪くなかったような。でも、これは諸星大二郎原作である必要はないかもなあ、と。

監督:塚本晋也
原作:諸星大二郎
出演:沢田研二、工藤正貴、上野めぐみ、竹中直人、室田日出男
20060217 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ゼブラーマン

 三池崇史監督、宮藤官九郎脚本、哀川翔主演というコテコテのスタッフが作り上げた異色のヒーロー映画。案の定、着眼点は良いのにそれを生かし切れていない脚本が泣き所でした。
 特撮ヒーローものではなく、あくまで色モノ映画だというのは三池監督という時点で分かっていたのでオッケー。豪華キャストもそれぞれハマり役で、主役級から脇役まで安直な扱いが無いのには大満足でした。ただ宮藤官九郎の脚本が辛い。一つ一つの台詞は気が利いているんですが、物語の全体を見通してのカタルシスが無く、伏線も皆無なので、見終わってからの感慨に欠けます。まあゼブラーマンとキメ台詞は格好いいし、見てくれと一発ギャグを楽しむだけの映画だと割り切って観るのが正解でしょう。

 哀川翔は良かった。渡部篤郎のケイゾクっぷりも最高。俳優には恵まれた映画ですね。あとTV版ゼブラーマンの渡洋史ってシャリバンですよ! びっくりしたー。「ゼブラーマンの歌」はもちろん唄・水木一郎なので、そちらも必聴。

監督:三池崇史
出演:哀川翔、鈴木京香、渡部篤郎、大杉漣、岩松了、市川由衣、近藤公園、柄本明、内村光良、渡洋史
20060215 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ピンポン

 曽利文彦監督による、松本大洋の同名コミックの映画化作品。ストレートなスポ根もので、それだけに単純で楽しめる映画に仕上がっています。

 曽利監督はCG畑出身の方だそうですが、専門分野をあえて前面に出さない題材選びが大正解。もともと原作自体、松本大洋の芸術性をスポ根の隠れ蓑に包んでいたおかげで大衆性を獲得していたので、そういう意味では漫画も映画も同じ方向性と言えるのでは。ほぼ原作通りながら、ところどころ映画独自の演出をからめた脚本も効果的でした。
 窪塚洋介のキャスティングには半信半疑でしたが、観てみればそれほど違和感はありません。ARATAも、ちょっと格好良すぎるけどそれはそれで。中村獅童と大倉孝二は原作と互角。竹中直人と夏木マリはお遊びの観はありますが、原作のイメージはきっちり引き継いでいます。原作未読者にも希求できる明快なキャラクター分けと物語が健在なので、映画単体でも楽しめる、良質なエンタテイメントに仕上がったのでしょう。

 突き抜けた面白さではないんですが、このところ誰でも楽しめる日本映画が少ないので、分かりやすい映画は大歓迎。こういう嫌味のない日本映画がもっと増えてほしいなー、と。あとは、原作に頼らないオリジナルの企画がほしいところですね。映画にすると、どうしても原作の内容が薄まってしまうので…。

監督:曽利文彦
原作:松本大洋
出演:窪塚洋介、ARATA、中村獅童、サム・リー、大倉孝二、夏木マリ、竹中直人
20060212 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

エイリアン2

 大成功を収めたSF・ホラー映画の続編。ただし前作とは映画のジャンル自体が変わって、派手なアクションと大味なシナリオの大作映画に仕上がっています。
 当時まだ無名だったジェームズ・キャメロン(契約時の監督作品は「殺人魚フライングキラー」だけ)が監督を務めていますが、既に彼の大作志向がこの作品からも伺えます。好きな人はけっこういるみたいですけど、僕は苦手。前作が優秀なホラー映画だっただけに、なんでこう安直なスケールアップをしてしまうのかと残念でした。脅威であるはずのエイリアンも次々と登場してはバタバタ倒されて有り難みがありませんし、最後の展開も突飛すぎで笑ってしまいました。これではB級スプラッタ・ホラーと大差ないのでは。冒頭のエイリアン登場シーンはけっこう怖かったし、銃器を使ったアクションとしては凄いのでしょうが、ちょっと納得がいきませんでした。

 ランス・ヘンリクセン演じるビショップは、この映画の唯一の救いでしょう。キャメロンはこういう脚本のセンスはあるんですが、でもB級っぽさを消しきれないのが最大の欠点。確かに前作を忘れて観れば面白いかも知れないけど、それって続編でやる必要ないのでは?

監督:ジェームズ・キャメロン
出演:シガニー・ウィーヴァー、キャリー・ヘン、マイケル・ビーン、ランス・ヘンリクセン
20060203 | レビュー(評価別) > ★ | - | -

モータル・コンバット

 TVゲームの映画化モノとしては比較的ヒットした部類に入るSFXアクション。監督は”ハリウッド最強のゲームオタク”ポール・W・S・アンダーソン。

 全体としてみれば面白味に欠ける物語ではありますが、もともとB級アクション映画にそういうのは期待していないので予想の範囲内。むしろ原作ゲームの物語を生かした「燃えよドラゴン」的構成や、キャラクターの生かし方など所々にセンスを感じました。特にスコーピオンとサブ=ゼロの不気味さは見事。当時としてはSFXの使い方にセンスがあり、かつカンフーもそこそこにこなしてくれるのでアクションシーンも飽きさせません。盛り上がってきたところで突然終わるのもB級らしくてかえってソソられてしまいました。
 確かに俳優が地味だったりBGMがうるさすぎたりしますが、お馬鹿アクションと割り切って観るなら、それなりに楽しめる好作です。テレビで放映してるとついつい見てしまいますね。

監督:ポール・W・S・アンダーソン
出演:ロビン・ショウ、リンデン・アシュビー、クリストファー・ランバート、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、トレヴァー・ゴダード
20060129 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ハイランダー/悪魔の戦士

 ラッセル・マルケイ監督、クリストファー・ランバート主演によるB級アクションの金字塔。唐突さと安っぽさが何とも言えない魅力を醸し出す名作です。
 とにかく必然性のないアクションが繰り広げられ、申し訳程度の迂遠な説明を踏まえつつ怒濤のラストへと続く展開が最高。さらに日本刀を使った殺陣が尋常じゃなく格好良い。何故日本刀なのかは不明ですが、その意味不明さと日本の時代劇顔負けの殺陣が、この映画を他の平凡なアクション映画と隔てています。これだけでもアクション映画ファンなら見ておくべきでしょう。そしてラストは……この拍子抜け具合は凄いので、期待してください。映画としては無茶苦茶で、怒り出す人もいそうな粗悪な出来ですが、非常に印象に残る作品なのは確かです。

 クリストファー・ランバートの若き戦士がやたら格好良かった。大御所コネリー卿が何故か出演しているのも見どころの一つ。とにかく美学を感じさせる一本でした。

監督:ラッセル・マルケイ
原作:グレゴリー・ワイデン
出演:クリストファー・ランバート、 ショーン・コネリー、クランシー・ブラウン
20060128 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -