ブラッドシンプル ザ・スリラー
ジョエル&イーサン・コーエン兄弟の監督デビュー作を、本人達が再編集したもの。初監督作品とは思えないほど練り込まれたシナリオに思わず唸らされる、サスペンス映画の傑作です。コーエン兄弟の作品といえば”勘違いで運命が狂っていく人々の滑稽なほどの悲劇”を常にテーマにしていますが、第一作目にあたるこの作品の時点で、その特徴は遺憾なく発揮されているのに驚かされました。シナリオ自体はシンプルなハードボイルド・ミステリなのに、”すれ違い”によって次々と事態が悪化する様はかつてないほど絶妙。画面の端々まで張り巡らされたドラマが、ラストに近づくにつれて収束していく様には思わず息を呑みました。何となく観るとただの三文小説のような物語なんですが、それをここまで面白く出来るのは、この兄弟監督にしか出来ない芸当でしょう。
オリジナル版は未見ですが、冒頭の解説以外はそれほど変わっていない様子。しかしその解説が妙な味を出しています。この本気だか冗談だか分からないあたりも、コーエン作品らしくて興味をそそられました。
M・エメット・ウォルシュが、探偵役を不気味に演じていて印象的。撮影監督バリー・ソネンフェルドによる映像も秀逸で、”何かが潜んでいそうな闇”を巧みに描き出していました。ハードボイルド小説に少しでも魅力を感じるなら、ぜひ一度観て欲しい映画です。
監督:ジョエル・コーエン
出演:フランシス・マクドーマンド、ジョン・ゲッツ、ダン・ヘダヤ、M・エメット・ウォルシュ

20060120 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

「
押井守による「攻殻機動隊」の劇場版第2弾。重厚な映像と哲学的な対話は相変わらずながら、前作とは全く異なる雰囲気の、不思議な映画でした。
押井守監督が士郎正宗の同名コミックを映画化し、世界中で話題となったSFアニメ作品。監督の世界観が存分に発揮された結果、哲学的で軍事要素の強い原作の雰囲気と同じベクトルながら、よりスリム化された毛色の違う作品に仕上がっています。
カルト的な人気を誇るロボットアニメの劇場版第2弾。前作よりもアクションやギャグを極力削り、研ぎ澄まされた画面から描写される”消極的な平和”という現代日本に対する提言がショックでした。アニメ云々より、戦争映画として稀に見る傑作です。
まだOSという言葉すらマイナーだった時代に制作された、ハイテク犯罪映画の傑作。もともとは”サンマの香りがするロボットアニメ”をテーマに、漫画家ゆうきまさみや押井守、伊藤和典などによって企画・制作されたビデオアニメの映画化作品だったんですが、これが嬉しい誤算でした。
フィリップ・K・ディックのSF小説を、スティーヴン・スピルバーグが監督した話題作。SFアクション系大作映画の定番をわきまえた出来で、名前に期待しなければそれなりに楽しめる映画だと思います。
ヨーロッパで最も高い評価を得ているコミック作家エンキ・ビラルの映画監督デビュー作。高い映像性と退廃的なムードが秀逸で、カルト映画と呼ばれるのも納得です。
旧ソ連の巨匠、アンドレイ・タルコフスキーの代表作の一つ。突如出現した”ゾーン”と呼ばれる空間と、そこに忍び込む人々を描いたSFサスペンスの傑作です。
ジョージ・ルーカス監督の長編デビュー作。学生時代に撮った短編映画を評価されて劇場用に作り直したもので、映画としての構成は単調で分かりにくいのですが、そのストイックな設定や物語はSF好きのツボを心得ています。