★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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バンカー・パレス・ホテル

 ヨーロッパで最も高い評価を得ているコミック作家エンキ・ビラルの映画監督デビュー作。高い映像性と退廃的なムードが秀逸で、カルト映画と呼ばれるのも納得です。

 頭で考えて論理的に理解するというよりは、見たままを感じる映画だと思いました。映画全編を通して出てくる自由な発想のモチーフが面白い。白い雨、機関車、出口のないホテル、旧式のアンドロイド、姿を見せない大統領、といった全てが、見たことがあるようなのに新鮮な印象で驚かされました。
 物語は一見荒唐無稽に見えて、実は根底に流れるテーマは一貫しています。戦争に対する半ば諦めにも似た感情と、未来への希望が同居する不思議な物語は、まさにエンキ・ビラルらしい物語といえるでしょう。このSFは政治批判と取ることも出来るでしょうが、それよりももっと根元的なものへの問いかけであるようにも思えました。

 ジャン=ルイ・トランティニャンが不気味な印象を残す政府高官を好演。ビラルの世界をそのまま映像化したような、青錆のような色味の映像は必見です。

監督:エンキ・ビラル
出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、キャロル・ブーケ、ハンス・メイヤー、マリア・シュナイダー、ヤン・コレット
20051231 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -
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