★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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ブラッドシンプル ザ・スリラー

 ジョエル&イーサン・コーエン兄弟の監督デビュー作を、本人達が再編集したもの。初監督作品とは思えないほど練り込まれたシナリオに思わず唸らされる、サスペンス映画の傑作です。

 コーエン兄弟の作品といえば”勘違いで運命が狂っていく人々の滑稽なほどの悲劇”を常にテーマにしていますが、第一作目にあたるこの作品の時点で、その特徴は遺憾なく発揮されているのに驚かされました。シナリオ自体はシンプルなハードボイルド・ミステリなのに、”すれ違い”によって次々と事態が悪化する様はかつてないほど絶妙。画面の端々まで張り巡らされたドラマが、ラストに近づくにつれて収束していく様には思わず息を呑みました。何となく観るとただの三文小説のような物語なんですが、それをここまで面白く出来るのは、この兄弟監督にしか出来ない芸当でしょう。
 オリジナル版は未見ですが、冒頭の解説以外はそれほど変わっていない様子。しかしその解説が妙な味を出しています。この本気だか冗談だか分からないあたりも、コーエン作品らしくて興味をそそられました。

 M・エメット・ウォルシュが、探偵役を不気味に演じていて印象的。撮影監督バリー・ソネンフェルドによる映像も秀逸で、”何かが潜んでいそうな闇”を巧みに描き出していました。ハードボイルド小説に少しでも魅力を感じるなら、ぜひ一度観て欲しい映画です。

監督:ジョエル・コーエン
出演:フランシス・マクドーマンド、ジョン・ゲッツ、ダン・ヘダヤ、M・エメット・ウォルシュ
20060120 | レビュー(評価別) > ★★★ | comments (0) | trackbacks (0)
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