★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
詳細な評価基準についてはこちら

となりのトトロ

 宮崎駿監督による大ヒット長編アニメ。この映画に関しては説明不要でしょう。ノスタルジックな風景と、健気な子供達が印象的な作品です。
 今まで架空の世界を舞台にしてきた宮崎監督が、初めてリアルな、それも昭和中期の田舎を舞台にして、しかもその空気を見事に再現しているというのに驚かされました。特に宮崎作品には初参加となる男鹿和雄による美術が、田園風景をみずみずしく描き出しています。キャラクターたちも元気で力がみなぎっているので、見ていて懐かしいような嬉しいような気持ちがこみ上げてきました。北林谷栄の味のある声や、糸井重里の棒読み声も良い。後半のドラマはなんかに不満は残るものの、その辺を指摘するのは野暮というものでしょう。子供が文句なしに楽しめて、大人も童心に帰ることのできる正真正銘のファンタジーです。

 とにかく何度見ても楽しめて、少しホロリとさせる名作でしょう。懐古主義だと言われようが美しいものは美しいんだー! という、“あの時代”に対するスタッフの思い入れが感じられました。

監督:宮崎駿
出演:日高のり子、坂本千夏、糸井重里、北林谷栄、島本須美、高木均
20060407 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

天空の城ラピュタ

 宮崎駿監督による長編劇場用アニメ第三弾にして、スタジオジブリ設立後初の作品。「ガリバー旅行記」の空中都市ラピュタをモチーフに、痛快なアクションと深みのある物語が繰り広げられる傑作です。

 「風の谷のナウシカ」の余韻が残る内に制作されたためか、テーマ性を極力排してエンタテイメントに徹した作りが小気味よくきまっています。主人公と軍と空賊の三つ巴の争奪戦、“冒険活劇”を地で行く怒濤の展開、「未来少年コナン」を思わせるパズーのコミカルなアクションなど、とにかく分かり易くかつ娯楽性の高い映像世界は、アニメならではの魅力が満載でした。
 最後まで一気に楽しめるのは、もちろん物語が良いのもあるんですが、同時にキャラクターの明快さも一役買っています。特に脇役の配し方が秀逸。ドーラおばさんやムスカ大佐は、他の宮崎作品にも見られるモチーフながら、この作品における彼らは白眉といえるでしょう。数々の名台詞は必見。相変わらず軍事マニアっぷりを見せてくれる宮崎監督の演出も見どころの一つです。

 子供のころに観たときは、エンドロールでのラピュタの姿を見ながら涙してしまいました。スタジオジブリならではの完成度の高いアニメーションと、宮崎監督の巧みなストーリーテリングが、最高のバランスで結実した一作です。

監督:宮崎駿
出演:田中真弓、横沢啓子、初井言榮、寺田農、永井一郎、常田富士男
20060406 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -

風の谷のナウシカ

 宮崎駿が、自らの連載漫画を原作に制作したアニメ作品。この映画には言うことはありません。テーマ性もオリジナリティも一級品のエンタテイメントです。

 圧倒的な世界観と、その世界設定を充分に生かたナウシカのキャラクターが、特に魅力的。監督の中で世界観が充分に消化されているからこそ出てくる設定であり、ナウシカに限らず他のキャラクターやエピソードにしても、世界観と違和感ない絡み方で説得力があります。ラストに向けての盛り上がりやカタルシスも十分すぎるほど。何よりこれだけの作品をオリジナルで制作してしまった宮崎監督の才能に驚かされました。
 余談ですが、宮崎監督の軍事マニアっぷりが散見されるのもこの映画の見所の一つ。戦車や飛行機の操縦方法、武器の挙動や弾道などなど、細かいところですが執拗なこだわりが感じられます。また、“爆発マニア”庵野秀明が全カットを担当した巨神兵のシーンなども必見。

 原作漫画のような濃さはないものの、映画は映画でインパクトがあって好きです。これほど高い完成度でまとまった作品というのは、実写映画でも稀でしょう。まさに日本のアニメーションを代表する作品です。

監督・原作:宮崎駿
出演:島本須美、松田洋治、榊原良子、家弓家正、納谷悟朗、永井一郎、冨永みーな
20060405 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -

ルパン三世 カリオストロの城

 宮崎駿監督の長編アニメデビュー作。ルパンの服の色を変えたり、カリオストロ公国が妙にリアルだったりと、いつものルパン映画らしくない作り込みで、今でもファンの心を捉えて離さない名作です。
 キャラクタ造形にいまいち華が足りない宮崎監督が、原作モノという題材を得て印象の強い映画作りに成功した好例。とにかく登場人物全てが魅力的。ルパンはいつもより二枚目だし、次元や五右ヱ門も深みがあって、オリジナルの「ルパン三世」のハードボイルド風味も良いんですが、この作品でのルパンたちの方が好きだったりします。初期の宮崎アニメらしい畳み掛けるようなアクションといい、最後まで笑っちゃうぐらい印象的な台詞といい、間違いなく日本製アニメの代表作の一つに数えられる作品かと。

 バイオレンスもお色気もない世界観は、本来のルパン三世のファンには不満なようですが、単体のアニメ作品として観るとやはり秀逸。一度は観ておいて損のない作品です。

監督:宮崎駿
原作:モンキー・パンチ
出演:山田康雄、小林清志、井上真樹夫、増山江威子、納谷悟朗、島本須美、石田太郎
20060404 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

ジュラシック・パークIII

 大ヒット恐竜映画シリーズ第三弾。監督は「ロケッティア」「ジュマンジ」などSFやファンタジーが妙に得意なジョー・ジョンストン。地味ながら質の高い映像が楽しめる秀作です。
 第一作の娯楽性と第二作のホラー性を掛け合わせたような内容で、悪く言えばどっちつかずなんですが、適度にハラハラ、でも暗くなりすぎずに楽しめるところは好感が持てました。登場する恐竜も少数精鋭。さすがに恐竜が出てくるだけでは驚かなくなったものの、スケールを実感させる巧みな見せ方で迫力を出しています。テーマ性を排して、娯楽に徹したシナリオも良い。コンパクトで何の気負いもなく楽しめるだけに、純粋な“恐竜映画”だと感じました。

 とにかくジョー・ジョンストンの作品を一つでも観たことのある人なら納得の出来でしょう。テーマはないと書きましたが、最後のラプトルとの対峙やプテラノドンの飛翔が、監督の恐竜への強い思い入れを示しているような気がしました。シリーズ中で最も、恐竜への愛に満ちた作品かもしれません。

監督:ジョー・ジョンストン
原作:マイケル・クライトン
出演:サム・ニール、ローラ・ダーン、ウィリアム・H・メイシー、ティア・レオーニ、ジョン・ディール、マイケル・ジェッター
20060403 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク

 スティーヴン・スピルバーグ監督による、大ヒット恐竜映画の続編。前作とは打って変わって、暗いムードのサバイバル・ホラーでした。
 前作で重いテーマを盛り込めなかった反動なのか、今回は人間と恐竜の関係を掘り下げたドラマに時間を割いています。特にピート・ポスルスウェイト演じるローランドの存在が象徴的。ただ前作の夢と冒険に満ちた作風が記憶にあったせいか、今作は重すぎて興ざめ。恐竜の“怖さ”を強調する演出や、ヤヌス・カミンスキーによるハイ・コントラストな映像も、観ている内に疲れてしまいました。

 前作とは比にならないほどリアルな恐竜たちはさすがに見所。あと評判悪い“本土上陸”は、実は好きだったりします。そちらにもっと力を入れて欲しかったぐらい。まあ、スピルバーグの思い入れが炸裂した映画、ということで…。

監督:スティーヴン・スピルバーグ
原作:マイケル・クライトン
出演:ジェフ・ゴールドブラム、ジュリアン・ムーア、ピート・ポスルスウェイト、ヴィンス・ヴォーン、ピーター・ストーメア、リチャード・アッテンボロー
20060402 | レビュー(評価別) > ★ | - | -

ジュラシック・パーク

 世界中の恐竜ファンの夢を実現したとも言える、スティーヴン・スピルバーグ監督による恐竜映画。マイケル・クライトンによる原作を、ILMの特殊効果技術を総結集して実現した驚異の映像は、当時としては奇跡を見るようでした。
 登場する恐竜は全てマペット(機械駆動の人形)かCGで、着ぐるみが一つもないというのは恐竜映画にとっては革命的なこと。実物大ティラノサウルス・レックスのマペットまで作ったというスピルバーグの力の入れ様は凄いの一言に尽きます。アクションシーンの撮り方に突出したものはありませんが、素材の良さを殺さないそつの無さは良かった。サム・ニールやジェフ・ゴールドブラムなど、もうお父さん世代になってしまったかつての若手スターが、主役級で出演しているのも嬉しいところ。ストーリーはグダグダだし、映画の構造も数多のジェットコースター・ムービーと大差ありませんが、とにかく大迫力の恐竜たちが画面の中を暴れ回っているというだけで感動モノでした。

 とにかく恐竜好きなら、一度は観ておくべきでしょう。この作品以降、ハリウッドではCGを使ってどんなシーンでも実現できるようになってしまいましたが、この作品を観たときほどの感動はもう得られないでしょう。それだけインパクトがあった映画でした。

監督:スティーヴン・スピルバーグ
原作:マイケル・クライトン
出演:サム・ニール、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラム、サミュエル・L・ジャクソン、リチャード・アッテンボロー
20060401 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

GODZILLA ゴジラ

 お馴染みローランド・エメリッヒ&ディーン・デブリンのコンビによる、かの名作怪獣映画のハリウッド版リメイク作。ラジー賞では“ワースト・リメイク・続編賞”にも輝いた勘違いぶりで、どこがゴジラなんだと問いただしたくなりました。
 冒頭のゴジラ出現シーンの演出には、近年の日本版ゴジラが忘れていた凄みを感じるものの、その後の展開は相変わらずエメリッヒ節炸裂でお粗末な限り。ゴジラがただの恐竜程度の扱いで、オリジナルの威風堂々たる佇まいは欠片もありませんし、対する人間のドラマも緊迫感がなく、ダークなトーンで統一された映像とは噛み合っていません。ゴジラ映画かどうか以前に、怪獣映画として楽しめない、ただ大迫力のVSFXが連続するだけの映画になってしまって、ひたすら残念でした。まあ、それこそエメリッヒ監督の持ち味なんですが。

 ちなみに、ハリウッドでは続編を三作目まで予定してたものの、さすがにそれは無理だったのかアニメシリーズへと方針を切り替えています。典型的な失敗作だなあ…。

監督:ローランド・エメリッヒ
原作:本多猪四郎、香山滋
出演:マシュー・ブロデリック、ジャン・レノ、ハンク・アザリア
20060331 | レビュー(評価別) > ★ | - | -

インデペンデンス・デイ

 「スターゲイト」のローランド・エメリッヒ監督によるSFスペクタクル映画。相変わらず紋切り型の展開ながら、大迫力の映像を楽しめる娯楽大作です。

 冒頭から終盤まで、いわゆる「宇宙戦争もの」の定番そのままなお気楽ストーリーですが、ここまで新機軸が無いと逆に安心して観ることが出来ます。その代わり、あらゆる特殊効果を駆使して繰り広げられる爆発やドッグファイトは見事な出来映え。想像を上回る大迫力の映像は、映画館で映画を観る醍醐味を実感できること請け合いです。
 ウィル・スミス、ジェフ・ゴールドブラム、ビル・プルマンという三人の主演俳優が、それぞれ対等に活躍するのがまた大作映画っぽくてツボ。ビル・プルマンは大統領が本当によく似合いますね。妙に感傷に訴えようとする物語が気になりますが、彼らのコミカルな演技のおかげでカバー出来ているのでは。

 例の演説に拒絶感を覚える人もいたようですが、僕はあそこはギャグだと思いました。実はアメリカ中心主義に対する皮肉なのかも。ともあれ、こういう中身ゼロの娯楽大作をきっちり撮れるエメリッヒ監督の手腕には脱帽です。

監督:ローランド・エメリッヒ
出演:ウィル・スミス、ビル・プルマン、ジェフ・ゴールドブラム、メアリー・マクドネル、ジャド・ハーシュ、アダム・ボールドウィン
20060330 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

スターゲイト

 ドイツ出身のローランド・エメリッヒ監督が手がけたSF大作。笑っちゃうほどコテコテの展開を大真面目にやる手法には、感動すら覚えました。

 近年のハリウッドで乱発される“B級大作映画”とでも呼ぶべきジャンルは、この作品から始まったと言っても過言ではないでしょう。なかなかキャッチーな出だしで、物語のスケールが大きく、全てにおいて手も込んでいるのに、物語の根幹は過去のB級SF映画と何ら変わりません。底の浅いものを大仰にやるので、かえって安っぽさばかりが強調されてしまいました。
 ただB級SFとしての出来はなかなかのもの。何より神々の変身や戦闘機の爆撃など、見せ場の迫力はかなりのもので、特撮監督エメリッヒの手腕が伺えます。“スネーク”カート・ラッセルの出演も嬉しいところ。物語も必要以上に期待しなければ楽しめるレベルで、テレビでやってるとついつい観てしまう映画、といった印象です。

 ハリウッドが忘れていた大作映画の良さを思い出させてくれた、と言えば存在意義もあったのかも。ただ過去の焼き直しに過ぎないので、作品自体の新鮮さはゼロ。エメリッヒ監督はそれだけの人だ、ということをハリウッドは早く気づいてあげるべきだったのではないかなあ、と。

監督:ローランド・エメリッヒ
出演:ジェームズ・スペイダー、カート・ラッセル、ジェイ・デヴィッドソン、ヴィヴェカ・リンドフォース
20060329 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -