天国の日々
 テレンス・マリック監督による、今世紀初頭のアメリカ農村地帯が舞台のドラマ。映画全体としては時代を感じさせるものですが、撮影がひたすら見事。演出も俳優もそれほどではなく、アメリカの原風景を活写するだけのこの映画が高い評価を得られたのは、やはり撮影監督ネストール・アルメンドロスに依るところが大きいでしょう。殆どのシーンを、わざわざ早朝と夕方の赤く焼けた光線だけを選んで撮影したという、前代未聞の映像に対するこだわりが映画全体の完成度を底上げしていて、何でもないシーンですら印象派の絵画のような美しさでした。ましてや四季折々の農場が見せる表情は、どんな脚本よりも感動的で説得力があります。「20世紀最高の映像」と評されるのも納得。
リチャード・ギアのステレオタイプなダメ男っぷりが気に入らなかったので、夕陽とサム・シェパードばかり見ていました。すぐカッとなって相手に掴みかかっていくことが格好いいことだとでも思っているんだろうか…。ただ映像のためだけにでも、観る価値のある作品です。
監督:テレンス・マリック
出演:リチャード・ギア、リンダ・マンズ、サム・シェパード、ブルック・アダムス

20060414 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

 小さな田舎町の大きなパラボラアンテナに関する実話を元にした、ロブ・シッチ監督によるオーストラリア映画。じっくり観せるタイプの、そつのない良作でした。
 ポーランドの巨匠クシシュトフ・キェシロフスキによる、「愛」に関する十編のドラマ。静かな演出ながら感情を強く揺さぶられる、文句なしの傑作です。
 エドワード・バンカーによる自伝的小説を、クセもの俳優スティーヴ・ブシェミが監督もこなして映画化。豪華な俳優陣が圧巻な、身に染みるドラマでした。
 70年代のイギリス・グラムロックシーンを題材にした実話風ドラマ。俳優や映像は良いんですが、当時の事情を知らない人間にはピンと来ない内容でした。
 カンヌ広告祭等で多くの賞を受賞しているロイ・アンダーソン監督による不条理芸術映画。ペルーの詩人セサル・バジェホの詩に影響されたという物語は、とにかく不条理で何が何だか、でした。
 周防正行監督による HOW TO もの映画第三弾にして、日本国内に社交ダンスブームを起こしたほどの大ヒット作品。相変わらずゆったりとしたテンポでそこはかとなく笑える映画のムードは最高なんですが、ちょっと豪華になりすぎてしまった感じでした。
 黒沢清監督・脚本による、真摯なテーマを孕んだドラマ作品。共感を持てる人には面白いんでしょうが、僕はこの映画のテーマには全く共感出来ませんでした。
 塚本晋也監督による、江戸川乱歩小説の映画化作品。この二人の相性は抜群ですね。乱歩世界の持つ独特の懊悩感が、映像に見事に現れていました。
 ビリー・ボブ・ソーントンが監督・脚本・主演の三役を務め、その名を一躍ハリウッドに知らしめた秀作。寓話的な物語なのに、不思議と説教臭さはありません。