★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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ジャッカス・ザ・ムービー 日本特別版

 番組中のアクションを一般人が真似て大怪我をするなど色々と物議を醸した、MTVの人気番組の映画化。日本公開は絶望視していたんですが、なんとか実現したので狂喜乱舞して観てきました。

 もう、とにかく「頭悪いなあ」という感想しかありません。映画になってもやっている事はテレビ版と殆ど同じで、ただスケールが若干大きくなっているだけ。「レンタカーで激突レース」「スポーツ用品店でボクシング」「大雨の街中でサーフィン」「どこでも棒高跳び」のように、意味がない、やる前から結果が分かっているからこそ誰もやらない痛いアクションをひたすら繰り返すわけです。あと平気で嘔吐脱糞したり、わざと怪我して笑うネタがあるので、覚悟してから観てください。
 洗練された笑いではないんですが、モーニングスターで釘を打つような豪快さがたまりません。これぞアメリカ。テレビ版の総集編的なDVDが出てるので、そちらも併せてどうぞ。

監督:ジェフ・トレメイン
出演:ジョニー・ノックスヴィル、スティーヴォー、バム・マージェラ、クリス・ポンティアス、ライアン・ダン、デイヴ・イングランド
公式サイト
20050920 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

スーパーサイズ・ミー

 CFやTV番組制作などで活躍し、その着想のセンスで人気のモーガン・スパーロック監督によるドキュメンタリー作品。「3食×30日間全てマクドナルドだけで食事したらどうなるか」という人体実験を監督本人が実践し、ジャンクフードが蔓延するアメリカの食品産業に鋭く問題提起しています。

 とにかく着眼点が秀逸。マイケル・ムーアのような強烈なユーモアはないものの、実験自体のインパクトと、ところどころに挿入される「食文化を巡るアメリカ資本主義社会の状況」がカルチャーショックでした。劇場を出る頃には以前より健康的な食生活をしようという気分になりますね。もともとファーストフードは年に数回しか利用しませんが…。
 ドキュメンタリー映画が社会に与える影響が強くなっている昨今、この映画に限らず、これらが必ずしも事実とは限らないという前提だけはしっかり意識するべきでしょう。でも、問題提起と、それにまつわる議論は重要。出来ればテレビ等で大々的に流してほしいんですが、やはり難しいんでしょうか。

監督:モーガン・スパーロック
出演:モーガン・スパーロック
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20050919 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

ベルヴィル・ランデブー

 ヨーロッパの俊英、シルヴァン・ショメ監督による初の長編アニメーション作品。独特のブラックなセンスあふれるストーリーと、ノスタルジックで可愛らしい美術が、日本のアニメにはない魅力を感じさせます。テンポというか映画文法がアニメ離れしていて最初は戸惑いましたが、つまりは一本の映画作品として十分に観賞に耐えうるものであるということでしょう。

 ヨーロッパ風にデフォルメされたキャラクター表現が見事。動作もメリハリがあって、細かいところでクスクス笑わされました。自動車や建物などに効果的にCGを取り入れて、でも手描きアニメの魅力を損なわないところは、やはり芸術の国フランスらしい拘りだなあと感心しました。世界は広い。
 そうそう、ジャズ全開で印象的な主題歌を始め、戦後フランスのノスタルジックな雰囲気満載のサウンドトラックも必聴です。

監督:シルヴァン・ショメ
声の出演:ジャン=クロード・ドンダ、ミシェル・ロバン、モニカ・ヴィエガ
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20050918 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

ロング・エンゲージメント

 J=P・ジュネ監督が長編デビュー直後から温めていたという企画。原作はセバスチャン・ジャプリゾによる人気ミステリ「長い日曜日」。
 戦争が題材ですが反戦メッセージはなく、同時にジュネらしい遊び心も今回は控え気味で、格調の高い映画に仕上がっています。それでも映像のセンスや俳優の演技といった細部に「ジュネ映画」がにじみ出ていて、思わずニヤリとさせられました。

 登場人物が多いのはいつも通りですが、今回はミステリなのでいちいち人名を覚えなければいけないのが大変でした。それでも映像的にフォローしているのは流石。この尖った演出がジュネの強みでしょう。画面の美しさに加えて、独特のカメラワークも健在。特に今回は空撮が印象的でした。あと「風」を使った演出も目をひきます。
 俳優陣はいつもの布陣が比較的脇役でサポートしているのに対して、チェッキー・カリョやジョディ・フォスターといった俳優も出演していて驚きました。それと、マネク役のギャスパー・ウリエルが魅力的で、出演シーンではつい見入ってしまったり。

 全体として、ジュネ独特の魅力に乏しかったような。原作モノだったからなのかも。ともあれ、 ここまで大予算の映画でも上手くまとめられる、ということを証明できたわけで、次はまた初期のようなブラックな作品を期待したいところですが、どうでしょう。

監督:ジャン=ピエール・ジュネ
出演:オドレイ・トトゥ、ギャスパー・ウリエル、マリオン・コティヤール、ドミニク・ピノン
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20050917 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

モーターサイクル・ダイアリーズ

 革命家チェ・ゲバラの、その活動とは全く趣の異なる青年時代の旅を描いたロードムービー。ゲバラ本人の著作と、一緒に旅をした友人アルベルト・グラナードの著作を下敷きに、実際に南米を旅しながら撮影された映像は、説得力があって色々と考えさせられます。

 主演のガエル・ガルシア・ベルナルが、一層大人になった演技で主人公を熱演しています。何かを見つめるときの視線が凄い。その他の登場人物にも存在感があり、市民一人一人の言葉には演技と思えない重さがありました。感情豊かな南米の景色も魅力の一つ。この国々は、50年の間になにも変わっていないのかもしれません…。
 それにしても最後のカットはずるい。ああいうことをされると、さすがにジーンときてしまいます。でも純粋にロードムービーとしても良くできていたのでは。観る前にゲバラの映画であるということは一回忘れて、観終わってから思い出すと映画の価値が一段と上がると思います。

監督:ウォルター・サレス
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ロドリゴ・デ・ラ・セルナ
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20050916 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

ネバーランド

 「ピーター・パン」の原作者ジェームズ・バリと、物語のモデルになった少年一家の交流を描いた、半分実話、半分創作の映画。監督は「チョコレート」のマーク・フォスター。
 ハリウッドでも顔の知られた俳優が何人も出演しているので、ジョニー・デップが良ければいいやと割り切って観たんですが、これがなかなか良い話で、ついつい泣かされてしまいました。創作にまつわるテーマにそもそも弱いというのもあるんですが、無理に感動させようとしない落ち着いた描写で、逆に感情移入させるあたりは嫌みが無くて好感が持てます。思わず見とれてしまう美しい映像も見物。

 主演3人(ジョニー・デップ、フレディ・ハイモア、ケイト・ウィンスレット)の演技が抜群に良くて、この映画の見どころの一つになっています。中でもフレディ・ハイモアは、台詞も動きも多いのにとても演技とは思えないぐらい。デップが「チャーリーとチョコレート工場」に推薦したというのも頷けます。
 それにしてもイアン・ハートがコナン・ドイル役で出演していたのは全く気付きませんでした。あと舞台でピーターを演じているのが、「トレインスポッティング」のケリー・マクドナルドというのも驚き。もう一度観るときは気をつけよう……。

監督:マーク・フォースター
出演:ジョニー・デップ、フレディ・ハイモア、ケイト・ウィンスレット
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20050915 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

コーヒー&シガレッツ

 「コーヒーと煙草」をテーマにジム・ジャームッシュが撮った短編集。もともとサタデー・ナイト・ライブの企画から派生したもののようですが、とにかくコーヒーと煙草をテーマに、登場人物たちのセンスの良い会話を楽しむ「だけ」というのが新鮮でした。それ以上の展開は無いので、知らないで観た人はかなり驚くんじゃないでしょうか。

 それでも100分近い上映時間が短く感じられるのは、出演陣のセンスの良さあってのことでしょう。特にイギー・ポップとトム・ウェイツのシークエンスは最高でした。会話を楽しむならカメラなんて止めたままで、音楽も邪魔にならない程度が丁度良いんだ、というジム・ジャームッシュの声が聞こえるようです。

監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:ロベルト・ベニーニ、スティーヴ・ブシェミ、イギー・ポップ、トム・ウェイツ、スティーヴ・クーガン、アルフレッド・モリーナ、ビル・マーレイ
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20050913 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

妖怪大戦争

 キワモノ映画に定評がある三池崇史監督による妖怪映画。リメイクと言うよりは、オリジナル新作のようです。監督の独特の映画文法は相変わらずで、そこに最近の作品では恒例になった豪華キャストが加わり、とても贅沢な映画に仕上がりました。

 映画の前半では、昔ながらの日本映画のような地味なドラマが展開されるのですが、中盤でその世界観は崩壊し、怒濤の展開でラストまで一気に突っ走ります。これだけ奔放でエネルギーのある映画は、この監督にしか撮れないでしょう。アクが強い映画が苦手な人には拒絶されそうですが……。
 CGI場面になっても違和感を感じさせない演出やカメラワークは見事。何より、主演の神木隆之介を始めとした俳優陣が魅力的で、それを堪能できるというだけでも、この映画を見る価値はあります。個人的には神木くんのサービスシーンと、全く演技をしようという意思が見られない清志郎のぬらりひょんがツボでした。

 三池監督のファンと子供には無条件でウケるのでは。忌野清志郎と井上陽水による主題歌も必聴。

監督:三池崇史
出演:神木隆之介、宮迫博之、菅原文太、忌野清志郎、栗山千明、豊川悦司
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20050912 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -