★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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メルシィ!人生

 「奇人たちの晩餐会」のフランシス・ヴェベール監督による、軽妙なコメディ作品。コンドーム会社に勤める男が、ゲイだと偽ってリストラを回避しようとしたために起こる珍騒動を、あの手この手で笑い倒しています。一つ間違うと差別的にもなりかねないゲイという題材を、気持ちよく笑える映画に仕上げています。

 実際、映画館でこんなに笑わされたのは初めて。息ができなくなって、思わずスクリーンから目を逸らしたほどです。しかも力ずくの笑いではなく、俳優が黙っている瞬間が一番笑えるという、コメディとしても正当派的な内容。計算し尽くされたネタは、一つ一つは爆発的ではないんですが、小さな波をテンポよく続けることで高い効果をあげています。逆に、そのシーンだけ切り出しただけでは笑えないだろう、というネタも多くて、監督のセンスの良さに感動してしまいました。
 後半ちょっと失速気味ですが、それを怪優ドパルデューが何とか埋めて、無理矢理のラストもまあ良いか、という気持ちにさせるのは、物語の芯にしっかりとしたテーマがあるからでしょう。主人公のや周囲の人に感情移入できたので、短い上映時間がもったいないぐらいでした。

 ハマれば思い出すだけでいつまでも笑えるので、下ネタ・ホモネタに抵抗がない方は、ぜひ。

監督:フランシス・ヴェベール
出演:ダニエル・オートゥイユ、ジェラール・ドパルデュー、ティエリー・レルミット、ミシェル・ラロック、ジャン・ロシュフォール
20050928 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

ミラーズ・クロッシング

 ジョエル&イーサン・コーエン兄弟による3作目の長編映画。過去のギャング映画を強く意識しながら、あくまでオリジナリティ溢れる作品にまとめ上げています。

 ギャング映画とハードボイルドのエッセンスを凝縮したかのような密度の濃いストーリーが、美しい映像美の中で展開される様は圧巻。ドライで印象的なキャラクターや、さまざまな出来事が折り重なって事態がどんどん悪化していく様など、後のコーエン作品に顕著な魅力が、既にこの映画で完成されているあたりは凄いと思いました。
 ガブリエル・バーンのダメ男っぷりが最高に格好いい。あとはアルバート・フィニーとかジョン・タトゥーロとかスティーヴ・ブシェミとか……俳優だけでも見どころは満載です。映像も、フィルム・ノワールのように思わせて、重要な見せ場を昼や朝に持ってきて美しくキメてしまうあたりは流石。ちなみに、撮影監督はあのバリー・ソネンフェルド。

 最初に観たときはこの映画の魅力が全く分からなかったんですが、その他のコーエン作品などを観た後にもう一度観たらハマりました。ギャング映画というお約束の中ですら滲み出てしまう、この兄弟監督の強烈な個性というのが最大の見どころ、ということでしょう。

監督:ジョエル・コーエン
脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
出演:ガブリエル・バーン、アルバート・フィニー、ジョン・タトゥーロ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、スティーヴ・ブシェミ
20050922 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

モーターサイクル・ダイアリーズ

 革命家チェ・ゲバラの、その活動とは全く趣の異なる青年時代の旅を描いたロードムービー。ゲバラ本人の著作と、一緒に旅をした友人アルベルト・グラナードの著作を下敷きに、実際に南米を旅しながら撮影された映像は、説得力があって色々と考えさせられます。

 主演のガエル・ガルシア・ベルナルが、一層大人になった演技で主人公を熱演しています。何かを見つめるときの視線が凄い。その他の登場人物にも存在感があり、市民一人一人の言葉には演技と思えない重さがありました。感情豊かな南米の景色も魅力の一つ。この国々は、50年の間になにも変わっていないのかもしれません…。
 それにしても最後のカットはずるい。ああいうことをされると、さすがにジーンときてしまいます。でも純粋にロードムービーとしても良くできていたのでは。観る前にゲバラの映画であるということは一回忘れて、観終わってから思い出すと映画の価値が一段と上がると思います。

監督:ウォルター・サレス
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ロドリゴ・デ・ラ・セルナ
公式サイト
20050916 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -