1984
ジョージ・オーウェルによって1949年に書かれたSF小説を、表題の1984年に映画化したという作品。ビッグ・ブラザーというリーダーの下に統制の敷かれた未来像が衝撃的でした。原作のテーマは様々な映画で応用されていますし、この映画自体、多数のオマージュを生み出したSF映画の隠れた名作です。全体主義からの逃亡というのはSFにおける普遍的なテーマの一つですが、そのテーマが端的にまとめられていて、非常に骨太な印象でした。とことん暗く救いのない世界が綴られる中で、愛だけが唯一の救いとして描かれているのが感動的。都市の荒廃ぶりや支配者の絶対性を、説明的な描写を用いずに映像の端橋から感じさせる演出も、映画の格を引き上げています。小説を読んだ方がテーマをより理解できるのでしょうが、映画だけでもその趣旨は充分表現できている、と感じました。
全体に暗澹としていて退屈な映画ですが、ハードSFが好きな人ならその重厚さを楽しめるはず。ビデオもDVDも国内では絶版なのが残念です。レンタル店では稀に見かけるので、気になる方は是非。
監督:マイケル・ラドフォード
原作:ジョージ・オーウェル
出演:ジョン・ハート、リチャード・バートン、スザンナ・ハミルトン、シリル・キューザック

20051224 | レビュー(評価別) > ★★★ | - | -

テリー・ギリアム監督によるSF映画の傑作。ギリアム監督のシニカルな面が存分に発揮された物語で、夢と現実の交錯する構成が見事な、カルト映画の代名詞のような作品です。
リドリー・スコットの名声を確実なものにした、SFサスペンスの傑作。80年代SF映画の最高峰のひとつで、荒廃した世界観とハードボイルド的な物語の組み合わせが見事です。
アメリカでヒットしたグラフィック・ノベルを、新鋭ヒューズ兄弟の監督で映画化。”切り裂きジャック”に関する推論を網羅したような物語は興味深いんですが、映画としては中途半端な印象。
イギリス出身のマイク・ニューウェル監督による、実話を元にしたサスペンス、というより二人の男の友情ドラマ。主演のジョニー・デップとアル・パチーノの演技も見事なものの、全体的に緊張感が足りない印象です。
ブラジル、リオデジャネイロ郊外の通称”Cidade de Deus(神の街)”を舞台に繰り広げられる、実話を元にした犯罪ドラマ。130分という上映時間に少しの無駄もない、むしろそれ以上の時間が凝縮された、爆弾のように強烈な映画でした。
変態映画を撮らせたら右に出るものはいないペドロ・アルモドバル監督による、何でも有りの恋愛群像劇。サスペンスの要素もありますが、そんな物語の細部なんか吹っ飛ばすセンスの良さが最大の魅力です。
日本漫画界に燦然と君臨するカルト作家諸星大二郎の伝説的名作「生命の木」を小松隆志監督が映画化。伝奇ホラーの醍醐味が詰まった原作のニュアンスは再現できていましたが、微かな物足りなさを感じました。
江戸川乱歩の怪奇小説4編を、4人の監督でオムニバス映画化。大満足とはいきませんでしたが、意欲的な実験作の空気を味わえたことと、実相寺乱歩の新作を楽しめたのは良かった。
自身がロケ地となったレストラン「ジジーノ」のオーナーでもあるというボブ・ジラルディ監督による、小粋なドラマ作品。最後にちょっとしたスパイスを利かせていますが、それ以上に地味なシーンを繋いでいく演出力が冴えています。