カタクリ家の幸福
韓国のホラー映画「クワイエット・ファミリー」を三池崇史監督が大胆に翻案したブラック・コメディ。分かってやっているとは思うんですが、とてもそうは思えない頭の悪さが最高です。舞台を日本に変えただけならともかく、明らかに勘違いぶり爆発の”ミュージカル化”だというから、さすがは三池監督。目の付け所がかなりあさってです。しかも昭和臭がプンプンする豪華なキャストまでついて、これを21世紀になってしまった今になってやるというのは明らかに自殺行為。実際、映画館はガラガラだったんですが、映画自体はとんでもない掘り出し物でした。
で、物語はあってないようなもの。とにかくバンバン人が死に、明らかに怪しいムードが映画に漂いますが、一番シリアスにならなければいけないところで突然ミュージカルになるのです。最悪の状況では笑うしかない、という心境の強烈な比喩でしょうか。さりげなく家族愛というテーマを組み込んでいますが、それも荒唐無稽な展開とか、脇役として登場する忌野清志郎や竹中直人のおかげでぶち壊し。終盤、暴走しすぎで観客がついていけなさそうな場面もあるんですが、綺麗に完結しているところが、やはり監督の手腕のなせる技なのでしょう。
とにかく映画全編を通して館内に笑いがこだまする、粋なミュージカル・ホラーでした。三池監督のキツい演出は観る人を選びそうですが、それだけに映画としてのエネルギーは十分すぎるほど。近年の日本映画は理屈ばかりで面白くない、突き抜けたバカが見たい、という人は必見。数々の”迷曲”が一生頭から離れなくなることは保証します。
監督:三池崇史
出演:沢田研二、松坂慶子、武田真治、西田尚美、宮崎瑶希、忌野清志郎、竹中直人、丹波哲郎

20060214 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -

山本英夫によるカルト・コミックを、多作で知られる三池崇史監督で映画化。とにかく映画全体に溢れるエネルギーが凄い。残酷描写が多いのに、それらをギリギリのところで制御しつつ笑いに変えているので、気持ち悪いとは感じませんでした。
日本アニメのファンというヤン・クーネン監督による、バイオレンス・アクションの秀作。あまりに過激なアクションは好き嫌いが別れそうですが、映像的に非常にレベルの高い作品でした。
グルジア共和国出身のゲオルギー・ダネリア監督が撮った、シュールなSFファンタジー。一見するとただ冗長でくだらない内容ですが、その不思議な世界観がツボにはまると最高に楽しめます。
テリー・ギリアム監督によるSF映画の傑作。ギリアム監督のシニカルな面が存分に発揮された物語で、夢と現実の交錯する構成が見事な、カルト映画の代名詞のような作品です。
デンマークの奇才、ラース・フォン・トリアー監督による異色のラブ・ストーリー。物語全体に漂う宗教観や映像美はこれまでのトリアー監督の作品同様ですが、今回はテーマ性を前面に押し出した、より感情を揺さぶられる作品に仕上がっていました。
ヴィム・ヴェンダース監督の代表作との呼び声も高いロード・ムービー。まだロード・ムービーというものをそれほど経験していない学生時代に観て、完全に打ちのめされました。
ジュネ&キャロのコンビによる長編第二弾(マルク・キャロは美術監督として参加)。14億円という、フランス映画にしては莫大な予算をつぎ込み、巨大セットをいくつも建造して創り出したヨーロッパ世紀末的な世界観が凄い。僕もchako氏も、あらゆる映画の中でこの作品が一番好きです。
ジャン=ピエール・ジュネとマルク・キャロのコンビによる、非常にブラックでユーモアに満ちた長編処女作。それまで映画に抱いていたイメージが、この作品によって根本から覆されました。それだけオリジナリティのある、希有な映画です。
ジャン=クロード・フォレストによるコミックを元に、1967に制作された不条理SFの傑作。映画としては破綻しまくっているんですが、ここまで凄いとかえって全てが許せてしまいます。