★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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マウス・ハント

 「ザ・リング」「パイレーツ・オブ・カリビアン」など最近はヒット作を量産しているゴア・ヴァービンスキー監督のデビュー作。なかなか器用な作風が売りの人ですが、このころから既に芸達者ぶりを発揮しています。ただ、全体に中途半端な印象でした。

 クリストファー・ウォーケンの「掃除屋」は流石に笑わされましたが、それ以外はどれも微妙。ビジュアルや設定からブラックコメディを期待していたんですが、映画自体はファミリー向けだったので物足りなく感じたのかもしれません。まったりとしたテンポなのも一因です。アクションシーンの演出自体は目が覚めるほど良いのに、ドラマとの接続が強引と感じるところもありました。
 したたかなネズミの行動自体は、観ていてついつい応援したくなるほど。映画自体のアイデアは良いし、決してつまらない映画ではないだけに、もう少しテンポが良ければ、と惜しい感じです。

監督:ゴア・ヴァービンスキー
出演:ネイサン・レイン、リー・エヴァンス、ヴィッキー・ルイス、クリストファー・ウォーケン
20051005 | レビュー(評価別) > ★★ | - | -

ビッグ・フィッシュ

 ダニエル・ウォレスによるファンタジー小説を、メルヘンの名手ティム・バートン監督が映画化。独特の悪趣味な世界こそ出てこないものの、おかげで非常に真っ当な感動作になりました。

 ティム・バートンの映画は、その童話的な語り口を良しとするかどうかで評価が分かれると思いますが、この作品は特にそう。とにかく冒頭から現実離れしたお伽噺の連続でメルヘン好きには堪りませんが、辛い人には辛いかも。でも、おそらくバートンの目にも(程度の差はあると思いますが)世界はこう見えているに違いないと思わせるほど「現実感のある非現実」が画面に溢れるのは圧巻で……しかし、それだけかと思っていたら、ラストのドラマでやられました。いい話です。
 ユアン・マクレガーの、絵本の世界を体現したような演技が素晴らしい。この人あっての、この作品でしょう。アルバート・フィニーのふてぶてしい演技も物語に説得力を持たせています。あとは例によってブシェミのかわいそうな役どころと、”サーミアン”ミッシー・パイルが登場していたことに笑わされました。映像もバートン映画の中では最高級。でも、全てがあまりに綺麗すぎて、ファンには少し物足りないかもしれません。

 今でも最後のカットを思い出すと泣けてきます。でも悲しい涙ではなくて、嬉しい涙なのが良い。夢物語は現実から逃げる手段かもしれないけど、それを全力で肯定する人生は、なんて素敵なんだろう、と実感できる作品でした。

監督:ティム・バートン
出演:ユアン・マクレガー、アルバート・フィニー、ビリー・クラダップ、ジェシカ・ラング、ヘレナ・ボナム=カーター、スティーヴ・ブシェミ、ダニー・デヴィート
公式サイト
20050924 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -

チャーリーとチョコレート工場

 ロアルド・ダールによる児童文学の傑作を、ティム・バートンが見事なまでに映画化。「ビートルジュース」や「シザーハンズ」以来となる極彩色の世界観は更に魅力を増していて、その方面でのバートン映画としては、これが集大成と言っても過言ではないでしょう。最近のバートン映画には勢いが足りないと思っていたところだったので、久々に純粋な「ティム・バートン作品」を十分に堪能できて大満足でした。

 ストーリーは終盤までほぼ原作通りで、後半の味付けも原作の雰囲気を損なっていません。物語だけでなく、原作を読んだ方なら夢想したであろう風景がそのままスクリーンに現れるのは圧巻。あのウンパ・ルンパの曲も原作と同じぐらい長く続いて欲しいと思ったりもしますが、そうすると緩慢でしょうか。
 他にも、ジョニー・デップやフレディ・ハイモアの名演、定番のダニー・エルフマンによる音楽など、褒めるべき点が多すぎて書ききれません。大作系になるとどうしても軽薄な演出が目立つ近年のハリウッド映画界において、ここまで確固として自分の世界を貫けるティム・バートンに、ただただ感謝するばかりの2時間でした。

 何はともあれ、バートンならではの映像世界が自由奔放に繰り広げられる由緒正しいメルヘンでした。バートンと児童文学のファンならば必見、です。

監督:ティム・バートン
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ジョニー・デップ、フレディ・ハイモア
公式サイト
20050912 | レビュー(評価別) > ★★★★ | - | -