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エレメント・オブ・クライム

 デンマークの鬼才ラース・フォン・トリアー監督が、その壮絶なビジュアルで世界中から注目を浴びた、異色のサスペンス映画。鉄錆のように赤くくすんだトーンで全編が構成され、幻想的な中にどこか危うさを含んだまま進行するストーリーは圧巻。

 主人公の刑事が事件の持つ異常性に取り込まれていく顛末を、饒舌な映像表現によって描き出しています。刑事の視線と映像とを同調させることで、観客までも催眠術にかけてしまおうとする病的な演出が凄い。計算し尽くされたカメラワークからは、映像を完全にコントロールしようとする監督の意気込みが伝わってきます。あまりに映像の毒が強すぎて物語が疎かになるようなところもありますが、その本末転倒ぶりこそこの監督の魅力なのでしょう。
 黄金色の海の中で溺れるような、不思議な感覚が観たあとも数日間抜けませんでした。良くも悪くも、それだけのインパクトを備えた映画。トリアー監督にとっては初期の作品ですが、後の作品に負けない拘りが感じられます。

監督:ラース・フォン・トリアー
出演:マイケル・エルフィック、メ・メ・レイ、エスモンド・ナイト
20051119 | レビュー(評価別) > ★★★ | comments (0) | trackbacks (0)
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