★★★★で満点、ネタバレは原則ありません。
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ノー・マンズ・ランド

 ボスニア紛争時にボスニア軍でドキュメンタリーを撮影していたダニス・タノヴィッチの長編デビュー作。やはりボスニア紛争を題材とし、軍やマスコミを巻き込んんだドタバタ劇を確実なタッチで描いている。リアリティに裏打ちされた演出と、その中で見せるブラックな、ときに笑うことのはばかられるセンスは凄い。

 明快なシナリオの中に、現地の勢力図を縮図として組み込むしたたかさがあり、各国語を話すキャストにきちんと演じさせているおかげで嫌味がありません。今までにない戦争映画、特に国連PKO関連の映画の中では決定打と言える作品かも。政治問題に興味がない人には辛いかもしれませんが、ちょっと興味がある人なら勉強のために見ても十分意味のある映画だと思います。
 凄いのは、これだけの現状をきちんと一つのシナリオにまとめ上げて、ところどころ笑いすら取ろうとすることです。ただE・クストリッツァのような狂気と情熱ではなく、ドキュメンタリー経験者らしく冷静に事態を描写していくスタンスが特徴的でした。

 後味の悪い映画で、この結末を作り出したのは他でもない西側諸国だ、という監督の叫びが痛いほど伝わってきます。ラストに至るころには情けなさで押しつぶされそうになりましたが、それだけ考えさせられる映画です。

監督:ダニス・タノヴィッチ
出演:ブランコ・ジュリッチ、レネ・ビトラヤツ
20051017 | レビュー(評価別) > ★★★ | comments (0) | trackbacks (0)
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