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ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1

 同名ファンタジー小説の映画化シリーズ第7作。とうとう二部作になって原作の細部まできっちり映像化しているので、これまでのシリーズ作品の中では段違いに面白くなっています。

 同監督による前二作ではシナリオにアレンジを効かせていたのに対し、今回は充分な上映時間があるおかげでほぼ原作通りの物語を再現できていて、ドラマに安定感がありました。特に今作は主役三人の逃避行がメインなので、これまで本編では省略されがちだったこの三人の心情描写がきっちりできたことで、物語への没入度も高くなっています。
 脇役たちもそれぞれ活躍の場があり、映像もこれまで以上にリッチに仕上がっているので、シリーズを通して観てきた人には感慨深いものがあるのでは。後編に向けての伏線の張り方も十分で、二部作の前編として文句のない出来でしょう。

 また、今回は過去のシリーズ作品と比べても演出に余裕があるのがよく分かりました。特に空撮などで状況描写をするシーンが豊富なため、シーンとシーンの間で上手くメリハリを付けられています。一方アクションシーンでもカットバックに頼らず、長めのカットを随所に挟みつつ描いていて、リズムの付け方が様になっていると感じました。
 初登場の俳優では、まずリス・エヴァンスがさすがの怪演を見せてくれました。予告編でも大写しになるビル・ナイも、登場シーンは少ないながら印象的。レギュラー陣では、ヘレナ・ボナム=カーターが相変わらず憎まれ役を上手く演じきっています。あとはやっぱりアラン・リックマンが格好良くて、出てくるだけで嬉しくなってしまいました。

 ファンとしては、やっとハリー・ポッター本来の面白さが映画館で体験できて大満足。あの原作をそのまま映画化するだけで、ここまで面白くなるということが何より驚きでした。上下巻ある原作の、下巻の序盤まで消化して余裕はたっぷりあるので、あとはこの調子で後編をじっくり描いてもらえれば、史上最高のシリーズ作品になることはまず間違いないでしょう。

監督:デヴィッド・イェーツ
原作:J・K・ローリング
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、レイフ・ファインズ、アラン・リックマン、ブレンダン・グリーソン、ロビー・コルトレーン、マギー・スミス、デヴィッド・シューリス、ジョン・ハート、トム・フェルトン、ボニー・ライト、ティモシー・スポール、ジェイソン・アイザックス、ヘレナ・ボナム=カーター、イメルダ・スタウントン、ジョージ・ハリス、リス・エヴァンス、ビル・ナイ
20110511 | レビュー(評価別) > ★★★ | comments (0) | trackbacks (0)
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