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悪魔の手毬唄

 市川崑監督による、石坂金田一シリーズ第二弾。前作と好対照を成す落ち着いた構成と、岡山の土俗的な空気が非常にマッチして、なんともいえない味のある暗さを作り出した、シリーズ中でも出色の作品です。

 エキセントリックさの目立つ前作に対して、今回はあくまでミステリの基本に忠実。犯人当てらしいギミックを盛り込みつつ、最後は横溝小説らしくお涙頂戴に持っていく定番の構成が効いています。手毬唄の不気味さや、犠牲者の陰惨な殺され方はトラウマものの怖さ。それでも落ち着いたトーンを保ち続ける映像と音楽が、映画全編を一つのカラーで貫く完成度の高い内容でした。
 俳優では、ひたすら岸恵子がキレイ! この人が出てくると画面が一気に華やかになります。ラストの展開などは説明的で辛いところもあるんですが、その華やかさのおかげで苦になりませんでした。相変わらずの石坂浩二や加藤武は安心して観られますし、大滝秀治、三木のり平、小林昭二といった常連組の出演も嬉しくなります。

 個人的には、僕の父親の地元である岡山の地名や言葉が多々出てくるので、こればかりはひいき目に見てしまいました。それでなくても、金田一ミステリの代名詞とも言えるもの悲しい空気が映画全編から感じられる、非常にオススメの一本です。ミステリファンならずとも、ぜひ。

監督:市川崑
原作:横溝正史
出演:石坂浩二、岸恵子、若山富三郎、仁科明子、北公次、渡辺美佐子、辰巳柳太郎、草笛光子、原ひさ子、川口節子、中村伸郎、加藤武、常田富士男、大滝秀治、三木のり平、小林昭二
20060321 | レビュー(評価別) > ★★★ | comments (4) | trackbacks (0)
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Comments

コレが一番怖いんじゃないかな〜!
良くこんなのばっか観て夜寝られますね!!!
チュチュ姫 :: 20060322 3:16
僕は、ホラーでも人間の犯人がいるのなら大丈夫なのです。逆にどんなに理由を付けられても相手が幽霊とかだとダメだったりするので、そういう映画は観ないことに決めています。
だからたまに観てしまうとダメなんです。「ブレア・ウィッチ2」とかはコテコテのホラーなので、観た日の夜は辛かった…。
kentaro :: 20060322 13:45
私は犯人が人間じゃない方がいい!なぜかというと、「ああ、これはこの人たちにしか起こらないこと」と思えるじゃないですか。私にも起こりえるようなことだとコワイ。
チュチュ姫 :: 20060325 22:15
ああ、確かにそれは正しい反応っぽいですね。考えてみると、僕は幽霊だとどこにでも出てきそうで怖くて、人間だとフィクションだと割り切れるから大丈夫なのかなあ、と。
幽霊はフィクションじゃないのか、とかツッコミどころはあるので、究極的には感情論なんですが。
kentaro :: 20060328 0:02

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