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イリュージョニスト

 ジャック・タチの遺した脚本を、『ベルヴィル・ランデブー』のシルヴァン・ショメ監督が映画化。良質なフランス映画のような、静かな感動がある秀作でした。

 前作の賑やかな雰囲気とは正反対の、静かで心にしみる物語に合わせて、映画のテンポもひたすらスロー。ほとんど台詞のない主人公二人をじっくりと描き、その一挙手一投足で感情を表現させています。大きなドラマがあるわけではないシンプルな物語なのに、何故か印象的なのはその演出が功を奏しているのでしょう。
 登場人物の可愛らしさや魅力的な街並みも見どころの一つ。細かい人物の動きや街の看板一つにもこだわりが感じられて、それらを眺めているだけでいい気持ちになれました。また、手書きのアニメーション作品にはあまり見られない、奥行きを強調した表現が多用されていたのに驚かされました。音楽も相変わらずノスタルジックで魅力的です。

 映画全体を通して、制作者自身がこの作品を大好きなんだという気持ちがひしひしと伝わってきました。少しもの悲しい物語も相まって、大人向けのアニメーションとしての新境地を拓いた作品と言えそうです。

監督:シルヴァン・ショメ
オリジナル脚本:ジャック・タチ
出演:ジャン=クロード・ドンダ、エイリー・ランキン
20110413 | レビュー(評価別) > ★★★ | comments (0) | trackbacks (0)
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